メロディック・パンク・バンドDizzy Sunfist(ディジーサンフィスト)の3rdアルバム『DIZZY LAND –To Infinity & Beyond-』が素晴らしい。本文中でも話しているが、メロディック・パンクはその性質的にサウンドの幅を生み出しづらいジャンルである。メロディック・パンクの金字塔でもあるHi-STANDARD『Growing Up』が誕生して25年以上を経た今、他ジャンルの方法論を拝借することなく真っ向からメロディック・パンクと向き合うことでパンクリスナーに鮮烈な印象を与える作品づくりは非常に難しい。しかし、彼女たちはそれを実現した。
収録されているのは12曲。どこを見ても穴がない。作品の流れまで含めて完璧で、「これぞ日本のメロディック・パンクだ!」と快哉を叫びたくなる内容に仕上がった。メロディはもちろん、胸がすくようなストレートなメッセージもいい。ジャパニーズ・メロディック・パンクの歴史を背負ったディジーが、「本当にこれでいいのか」ととことん悩みながら、渾身の力を振り絞って産み落とした一枚だ。ギターヴォーカルであり、ソングライティングを担うあやぺたに今作の制作の裏側を聞いた。コロナ禍に加え、ベースいやまの卒業という困難に見舞われた彼女たちだが、そんな状況にもめげずに突き進むコツは、意外な意識の持ち方だった――。
―めちゃめちゃいいアルバムができましたね!
ほんまですか? めっちゃうれしいっすわぁ!
―ディジーの最高傑作であることはもちろん、パンクシーン全体で見ても文句なしの傑作ですよ。ここまでのメロディック・パンクのアルバムってなかなか出てこないと思います。手応えはいかがですか?
出来上がって聴くまでは不安なところはあったんですけど、マスタリングが終わって全部通して聴いて「いいのできたな……」って。そのあと、インタビューでいろんな人が話を聞いてくれるなかで、「ああ、よかった!」って思いました(笑)。
―周りの感想を聞いてようやくいいアルバムができたと実感できた。
そうですね、やっと。
―つくってる最中から「これはいけるぞ」とはならなかったんですね。
つくってる最中は作曲とかでけっこう悩んでたんで。ボツになる曲も多かったし、「これでほんまにええんかな……?」って試行錯誤しまくって。一度、どの曲をアルバムに入れたらいいのかわからなくなったりけっこう苦しいときもあって、ようやく12曲が揃ったって感じです。
―ボツにした曲はけっこうあったんですか?
今回はけっこうあります。
―何がそんなに悩ませたんですか?
自分のなかのボーダーラインが今までに比べて上がったのかもしれないです。「この曲じゃみんなの心を揺さぶれない」と思った曲がいっぱいあったというか。「この状態だとまだまだ足りひん」とか。そこでアレンジを重ねていったことで完成されていきましたね。
―「これじゃあ納得してもらえない」っていうのはこれまでも同じだったと思うんですよ。今回は何が違ったんですか?
3枚目ともなると今まで使ってきたネタが全く使えなくなるじゃないですか。同じような曲調、同じようなサビ、同じようなコード進行、同じような展開……同じ人間が作ってるのでそういうのが出まくるじゃないですか。そことの戦いがつらかったですね。「ここでサビが来て、そのあとにソロが続くのって一緒やん」とか。
―確かに、メロディック・パンクって音楽的に幅を生みづらいし、もはやアイデアが出尽くしてますよね。そこでどのバンドも試行錯誤して新しいアイデアを盛り込んでみたりして違いを生み出していると思うんですけど、このアルバムってドストレートにメロディックパンクですよね。
めっちゃうれしいっすわ、それ。8ビートの曲が増えたりしたので、メロディック・パンク要素が減ってるんじゃないかって思ってたんですよね。よかったー!
「So Beautful」