古田新太が語る、我が道を進む変わらぬ「生き方」

Rolling Stone Japan vol.16掲載/Coffee & Cigarettes 31|古田新太(Photo = Mitsuru Nishimura)


そんな古田にとって、もっともタバコが「美味い」と感じる瞬間はいつだろうか。そう尋ねると、しばらく考えたのちにこう答えた。

「寝起きかな。休みの日は朝っぱらから缶ビールを開ける。起きたばかりは喉が一番乾いている状態じゃないですか。そこにビールを流し込んで、タバコをスパーッと吸う瞬間が一番幸せです。『ああ、今日は何にもしなくていいんだ』と心の底から実感できる。酒飲んでいる時や、仕事が終わった後に吸うタバコも美味いけど、休日の朝イチに敵うものはない。そんな機会は滅多にないですけど」

喫煙可能な行きつけの飲み屋で一杯ひっかけるのが日課だったという古田。新型コロナ感染拡大にともなうステイホーム期間が続き、思うように外出できなくなった今、彼はどのような日常を過ごしているのだろうか。

「別にワイワイ騒ぎたくて飲んでいるわけではないんです。酒は一人で飲んでも美味しいですし。そもそもオイラにとって、自宅にこもること自体は決して苦ではないんです。Netflixで『スーサイド・スクワッド』と『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』を連続で見ながら酒を飲んでいれば幸せなので(笑)、『外出できないとフラストレーションが溜まる』という感覚がよくわからない。そりゃ友だちと会いたいけど、だったら電話でもなんでもすればいいと思います。別に直接顔を合わせることだけが『会う』行為ではないですし、コミュニケーションの形はいろいろあっていいじゃないですか」

とはいえ音楽好きの古田にとって、気軽にライブハウスへ足を運べなくなったことは「とてもつらい」とこぼす。



「もともとオイラは洋楽しか聴いてこなかったんですけど、椎名林檎さんと宇多田ヒカルさんに出会って衝撃を受けた。『日本にもこんなカッコいい音楽があるんだな』と知って、そこから日本のロックも聴くようになりました。オイラの友人である♀田(本人であるという噂も)が主催している『♀フェス ~日本一おもろいバンド決定戦~』も、2年連続で中止になってしまって。いつも出演してくれる仲間のバンドたちとフェスで暴れられなくなったのが、今は一番つらいです」

ライブハウスへ足を運ぶことも、映画館へ行くこともままならない状況が続き、「正義」や「良心」の行き違いによる対立や分断があちこちで起きている。それは古田が主演を務める映画『空白』の中でも重要なテーマだ。

「誰か一人でも『悪人』を作れば楽じゃないですか。勧善懲悪のカタルシスや、反対に悪人が勝つピカレスク浪漫の爽快感が得られるわけですから。でも、この映画は一つもすっきりしないでしょう? みんな自分の『正義』に意固地になっているが故に、誰も救われない話になっている。つくづく吉田さんって意地悪な監督だと思います(笑)。ただ、現実世界でも立場によって『正義』って変わりますよね。『マスクはコロナ対策の必須アイテムだ』と言う人もいれば、『ずっとマスクしていたら子供たちの免疫力が落ちているじゃないか』と言う人もいる。こんなふうに閉鎖された空間に長いこといると、どうしても考え方が偏ってしまいがち。『もっと臨機応変で大らかに生きましょうよ?』と思います。そうじゃないと、結局は自分を追い詰めることになるわけですから。映画『空白』を見ながら、そんなことをぼんやり感じてもらえたらうれしいです」


古田新太
1965年12月3日生まれ、兵庫県出身。劇団☆新感線の看板役者。劇団での活動と並行して、多くのレギュラー番組や、雑誌の連載などを持ち人気を獲得する。俳優としても他に代わる者のない存在として様々な作品で活躍中。映画やTVドラマ以外に声の出演も多く、『パディントン』(2016年)とその続編(2018年)の日本語版でブラウンさん役を務め、パディントン役の松坂桃李と共演している。



空白
全国劇場にて公開中
配給:KADOKAWA
出演:古田新太、松坂桃李、田畑智子、藤原季節、趣里、伊東蒼、片岡礼子、寺島しのぶ
監督・脚本:吉田恵輔
© 2021 『空白』製作委員会

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