安田レイが語る、大切な「あなた」を歌うことで辿り着いた自己肯定

─すばらしいです。ようやく「blank sky produced by TENDRE」の話に移りますが、これはまたタイプが違う曲ですね。

さっきお話しした通り、2月のワンマンライブで、アンコールをいただいたら歌おうと思って作った1曲です。フルバンドのかっこいいステージが終わった後に、ピアノの弾き語りで披露したんですけど、鍵盤を見て「はっ、どこだっけ? コード」っていうところから始まったぐらい緊張しちゃった思い出もあります。デモは部屋で携帯のボイスレコーダーを使って録ったもので、「これ、TENDREさんマジックがかかったらどんなふうになるんだろう」ってすごく楽しみだったんですけど、出来上がったのを聴いて、なんて美しいトラックなんだろうって思いました。TENDREさんの楽曲にも備わっている、優しさというか包容力みたいなものをすごく感じて。音数も少ないし、ボーカルが近いから、声と言葉がすっと入ってきて、映像が浮かぶんですよね。今よく聴いている、大好きなタイプの楽曲に近いものになったと思います。

─伸ばす音に込められた情報量が多くて、とてもニュアンス豊かな曲だと思いました。このEPを聴いて、歌手として進境著しい印象を受けたんですが、その理由の大きな1つでもあります。

うれしいです。やっぱり音数が少ない分ごまかしがきかないというか、丸裸で歌ってるようなトラックなので、いつも以上にニュアンスには心を込めました。もともとめちゃくちゃレンジが広いほうではないので、ブレスとか語尾とか……特に語尾かな。語尾フェチです(笑)。いろんなアーティストの曲を聴いてても、言葉の終わり方が雑だと、そこばっかり気になっちゃうんですよ。逆に丁寧に歌ってる人だと、余韻に浸ったまま次の言葉が入ってくるから、ずっと余韻のなかにいられてすてきだな、って思うし。語尾はわたしもいちばん丁寧にしたいなっていつも心がけてます。

─声の響きもとても優しいです。

余裕のある声域で、自然にニュアンスや感情表現に力を入れられたと思います。キーが高すぎると、そこに当てるのに精一杯で語尾を丁寧に扱いきれなかったりするので。無理のない歌というのは「It’s you」にも通じる部分で、もちろん「Not the End」みたいな、ウワーッと魂のようなものを強く感じさせる歌もかっこいいんですけど、今回はパーソナルな2曲を作りたかったんです。

Rolling Stone Japan 編集部

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