筋肉少女帯が語る、自分たちが描いてきた世界になってしまった戸惑いと使命感

―「坊やの七人」にもガンマンは出てきますよね。

大槻:ああ、そういえばそうですね。「坊やの七人」はデモをもらったときはもう少し映画『荒野の七人』のサントラのイメージがあったんですけど、そこで「坊やの七人」というウェスタンで拳銃ドンパチみたいなものを考えたんです。その繋がりで、あるいは「大江戸鉄炮100人隊隠密戦記」も発想したのかなと、今になって思います。

―内田さんはどういう発想でこの曲を書いたのでしょうか。

内田:2020年は家にこもって一日中ニュース見て作曲作業して過ごしてたけど、いまひとつパッとしなくて。今思えばやっぱりコロナ鬱だったのかもしれない。それで、2021年になって、前年から引きずっていた重く暗いモチーフが明るい方に変化して結果「COVID-19」となりましたと。「坊やの七人」はヤケクソ感がすごくあって、なんかもう適当にやっちゃえっていうノリがありました。『荒野の七人』をモチーフにしてハードロックになるかなっていうアイデアからはじめて、でも本編は40年前にラ・ママでやってるニューウェーブバンドみたいな感じになってます(笑)。基本に立ち戻った感じで、狙ってこうしてやろうっていうのがなくなった曲です。

―曲ができた頃には、コロナ鬱みたいな気持ちは消えていたんですか?

内田:そうですね。だから「グズグズ言っててもしょうがねえや」という感じが出たのかなと思います。

大槻:いやあ、内田君にコロナ鬱があったということが、衝撃ですよ。作詞者はどうしても、コロナ禍と関わらざるを得ないんだけど、作曲者というのはハテどうかな?と思っていたんですけど、このアルバムも含め、今の時期に出る作品は、少なからずパンデミックの影響を受けているんでしょうね。それを思うと、あと何十年かしたら、コロナ禍の時代に作られた“パンデミック・ミュージック”が検証されると思うんです。その中で、『君だけが憶えている映画』は、核になるというか、代表的なアルバムになっている気がします。「坊やの七人」は家庭の分断について歌われているんですけど、今回のアルバムはモチーフとして“境界線”という言葉が何度も出てくるんです。それはつまりパンデミックによる世界の分断のことなんですよ。でも世界はそもそも分断されている、そこに我々は生きている、ではそこでどうしていくかということを前向きに、客観的に、どこのセクトにも寄らずに書いているんです。例えば「世界ちゃん」という曲は、個人の中での“個と世界”というものの分断、境界を書いた、所謂セカイ系の歌詞ですけど。「坊やの七人」も、その境界というのは世界の分断という大きなものから、家庭の中にもあるだろうし。この曲が面白いのが、歌詞は父と子の別れみたいなものを描いているんですけど、そこにものすごい演奏陣のバトルが始まるんですよね。だから、ちょっと音楽と歌詞の世界観が分断していて、そこが偶然にもこのアルバムのテーマを描いていて、面白い曲になったと思います。

Rolling Stone Japan 編集部

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