ローリング・ストーンズ『Tattoo You』を再検証 このアルバムこそ絶頂期だった?

アウトテイクも想像以上に充実

『Tattoo You』が、制作時期から約10年遡った1972〜73年に行われたセッションをベースに作られたと聞くと、そのアルバムにも採用されなかった残り物は本当にクズだと思うだろう。確かに、アウトテイクバージョンを集めた『Lost & Found: Rarities』に収録された「Trouble’s a Comin’」や「Living in the Heart of Love」などは、よくあるロック曲だと言える。ただし、「Trouble’s」のギターワーク(クレジットなし)は秀逸だ。

しかし、これまで音源がほとんど流出しなかった「Come To The Ball」は、アルバム『Sticky Fingers』の時代を思わせる素敵な曲だ。またアルバム『It’s Only Rock ‘N Roll』のセッション時に録音されたドビー・グレイの「Drift Away」(邦題:ドリフト・アウェイ(明日なきさすらい)のリメイクバージョンも、魅力的な曲だと言える。しかしストーンズのメンバーにとっては、イマイチだったということだ。さらに、長い間ブートレッグ盤でしか聴けなかったアルバム『Some Girls』(邦題:女たち)のアウトテイク「Fiji Jim」が、クリアなサウンドで収録されているのも嬉しい。自由奔放でやり邦題だった70年代のキース・リチャーズが帰ってきた。ただ、「Waiting on a Friend」が完成に至る前の初期バージョンも、ぜひ聴いてみたかった。




「Start Me Up」のレゲエバージョンはお蔵入りしてよかった

今回の『Lost & Found』には、「Start Me Up」のごく初期のレゲエバージョンも収録されているが、ボツにして正解だった。聴き慣れたバージョンと比べると締まりがない(ストーンズのレゲエといえば、アルバム『Black and Blue』の「Cherry Oh Baby」の方がずっといい)。

アルバム『Black and Blue』といえば…

『Tattoo You』に収録された楽曲「Slave」(邦題:奴隷)は、最もグルーヴ指向の強かった『Black and Blue』のセッションから生まれたことで知られる。『Black and Blue』の「Hot Stuff」同様、「Slave」も同じコード進行の繰り返しだが、ソニー・ロリンズのサクソフォンという強力な武器が加わっている。ストーンズが時折、いかに海老で鯛を釣っていたかがわかる典型的な曲だ。

Translated by Smokva Tokyo

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