『風街とデラシネ』松本隆の作詞家50年を名曲の詞とともに振り返る

想い出の散歩道 / アグネス・チャン

1974年3月発売。アグネス・チャンのアルバム『アグネスの小さな日記』の中の「想い出の散歩道」。このアルバムの中で、もう1曲松本さんが詞を書いていたのが「ポケットいっぱいの秘密」で、これがシングルになったわけですね。そちらがヒットして、作詞家・松本隆が歌謡界、芸能界側にも知られていくという曲です。でも、松本さんらしいという意味では「想い出の散歩道」の方じゃないか。これは矢野顕子さんがカバーしてます。当時、松本さんはアグネス・チャンに書いたことで、「友だちをなくした」。この話はあちこちでされてましたね。当時はあっち側、こっち側というのがあった。この番組でもしょっちゅうこの話が出てきますけどね(笑)。芸能界と音楽界、演歌、歌謡曲とフォークロック。職業作家とシンガーソングライターと言っていいでしょうね。あっち側の世界とこっち側の世界があって、アグネス・チャンが所属していた渡辺プロダクションはあっち側の牙城だった。松本さんがアグネス・チャンを書いたことで、「松本は歌謡曲に寝返った。芸能界に身を売った。あっち側に行ってしまった」というふうに言われていたんですね。

私もはっぴいえんどで松本さんという名前を知った人間としては、「え!? 松本隆どうしちゃったの!?」と思っていた1人ではありますが、そのことを誰よりも理解していたのが筒美京平さんだったんですね。筒美京平さんが「夏色のおもいで」をどう思ったか。その話も本の中には出てきます。1974年11月発売、太田裕美さんのデビューシングル「雨だれ」。

Rolling Stone Japan 編集部

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