『風街とデラシネ』松本隆の作詞家50年を名曲の詞とともに振り返る

組曲「噫無常」嘆きの舞姫(バレリーナ)~イカリの水夫 / あがた森魚

松本隆さんのプロデュースした第2作目のアルバム。あがた森魚さんのアルバム『噫無常』から、「組曲「噫無常」嘆きの舞姫(バレリーナ)~イカリの水夫」お聴きいただきました。前半の詞が松本さんで、後半があがた森魚さんなんですね。松本さんはこのアルバムをプロデュース、作詞、演奏、ミュージシャンの選択、リズムアレンジまでやっているんです。あがた森魚さん、松本隆さんのお互いのセンスがどこで一緒になったかというのが、この曲でお分かりいただけるかなと思ったりもするのですが、このアルバムを取り上げないと、松本さんの50年を語れないというところがありまして。なぜかと言うと、理由は2つ。1つはこの中に「最后のダンスステップ(昭和柔侠伝の唄)」って曲が入っているんです。「昭和柔侠伝の唄」というサブタイトルがついているのですが、これをクミコさんがカバーしたんですね。それを松本さんが聴いて、クミコさんのプロデュースに繋がるという、2000年前後の話ですね。

松本さんがプロデュースしたアルバムが4枚ありました。順番に言うと、南佳孝さんの『摩天楼のヒロイン』、岡林信康さんの『金色のライオン』。そして、あがた森魚さんの『噫無常』。1974年に岡林さんでもう1枚、『誰ぞこの子に愛の手を』というアルバムのプロデュースをしているのですが、プロデューサーとして生活ができなかったと本人も言っております。風都市という事務所があったのですが、閉鎖してしまって。プロデューサーとしては暮らせない。だから、作詞家に専念することを決めたんだと言われてましたね。プロデューサーとして食べられなかったから、作詞家になった。こういう言い方をすると、身も蓋もないですけどね。こういうことが1年足らずの間に起こっているというのが、1973年当時の世の中の出来事としても象徴的でした。

作詞家としての軌跡をこの後に辿っていくのですが、その前に紹介したい曲があるんです。こんな曲、絶対ラジオでは流れなかった。柳田ヒロさんの1972年9月のアルバム『HIRO』の中の「乱れ髪」です。

Rolling Stone Japan 編集部

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