惨殺事件をミュージカルの題材に エスカレートする「実録犯罪物」コンテンツ

「彼女の遺族は今も生きている」

Maven社は「ロンドンのソーホー劇場で予定されている本作品のワークショップで、いくつかの役柄のキャスティングを行う」ことを認めたが、「作品自体が製作段階に戻されたため」来年の春まで保留状態だと述べた。演出のベイカー氏も、ミュージカル版『殺人者への道』は依然として制作段階であることをTwitterで認めたが、それ以上は口をつぐんだ。記事掲載時点で、脚本家のミレイ氏からのコメントはまだ出ていない。

ミュージカル版『殺人者への道』のキャスト募集を最初に見つけたのは、TikTokのユーザー@bloodbathbeyondことジェシカ・ディーンさん(25歳)だ。ディーンさんは自らのYouTubeページやTikTokページで、実録犯罪コミュニティや悲劇の商品化を批判してきた。ローリングストーン誌に語ったところでは、Netflixの『タイガーキング2』に対する彼女の批判を活動家で作家のワガトウェ・ワンジュキ氏が投稿し、そのツイートの返信に募集要項のリンクが貼られていたのを見て、ミュージカルのことを知ったそうだ。

ディーンさんは動画の中で、ハルバックさんの思い出を搾取しているミュージカル制作陣を非難した。「自分の娘や愛する人や姉が惨殺され、誰もが知るところとなり、おぞましい詳細が表に出て人々の餌食になる……15年後にはミュージカルになるのを想像できる?」。動画の中で彼女はこういった後、ハルバックさんについて付け加えた。「彼女の遺族は今も生きている。本当にこれが私たちの一番望むやり方なの?」

ハルバックさんの殺害現場からさほど離れていない郡で生まれ育ったディーンさんは、原作の『殺人者の道』シリーズも好きではなかったとローリングストーン誌に語った。エイヴリーに都合のいいように「きわめて一方的に描かれている」と感じたそうだ。仮に刑事司法制度にメスを入れることがミュージカルの狙いだとしても、とても趣味がいいとは言えない、と彼女は言う。「おしなべて実録犯罪ものは、実際の悲劇の商品化や下世話な娯楽化で人々を満足させてきた」と本人。「もしこの男(エイヴリー)が無実なら、彼は罰を受けているんだから、なぜ彼の苦悩をミュージカルにするの? 本当に彼のために正義を果たしたいと思うなら、ミュージカルが最善の策なのかしら?」

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from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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