川谷絵音とpH-1が語る、indigo la Endで両者がコラボレーションした意味

今までインディゴで書いてきた「ラブ」とは少し違う。

―歌詞では川谷さんとpH-1がそれぞれの筆致で「ラブ」を描いているのが面白いなと。

川谷:まずは自分の歌詞を書いて送って、それにpH-1がラップを入れて返してくれたんですけど、僕の歌詞が“古びた形のラリー 終わらない”で終わっているのに対して、pH-1はもうちょっと前向きな歌詞を書いてきて。そこで僕ももっと前向きな歌詞に変えることはできたんですけど、この曲では文化の違いによるお互いの微妙なすれ違いを表現したいと思っていたので、そのままにした方がリアルなすれ違いを表現できるから、あえて合わせずに、そのままにしたんです。

―pH-1は日本語で“愛は難しいものではないでしょう”と言ってますもんね。お互いがリスペクトをもってひとつの作品を作りつつ、でも微妙にすれ違ってもいる。

川谷:そこが面白いと思いました。一人二役ですれ違いを表現するのは難しいけど、ツインボーカルならそれがやりやすいので。タイトルに関しては、最後の最後に「ラブ」にしたんです。これしかなかったというか、これくらいシンプルな方がわかりやすいかなって。

―2021年は多くのアーティストが「ラブ/ラブソング」に向き合っている印象があって。星野源さんと米津玄師さんが同時期にラブソングを書いていたり、川谷さんが楽曲提供をしたMISIAさんの新しいアルバムのタイトルも『HELLO LOVE』だったり。コロナ禍で価値観が大きく変化する中、「ラブ/ラブソング」をもう一度捉え直そうとしているようにも見えて、だからインディゴの新曲が「ラブ」だったのも、個人的には「おっ!」と思って。

川谷:僕らはもともとラブソングばっかり書いてましたからね。でも大衆的な位置にいる人が書くラブソングと、僕が書くラブソングは全然違うというか、そもそも影響力が違うから、僕は広い視野では書いてなくて、もっと狭いんです。ホントに自分のちっちゃなことというか、誰に聴いてほしいわけでもないラブソングなんですよ。誰かに届けたいラブソングなんて一曲もないんです。でも、それを聴いてくれる人がいて、それはありがたいなっていう感覚でしかなくて。

―なるほど。

川谷:ただ今回の曲に関しては、韓国のpH-1と一緒に曲を作ったことで、いつもよりちょっと広い意味になったとは思います。だからこそ、あえて「ラブ」というタイトルにしたというか、今までインディゴで書いてきた「ラブ」とは少し違うっていう、そういうニュアンスもありますね。

―中国ツアーで海外にも目が向いたように、今回のコラボレーションはさらに視野を広げるきっかけにもなったのではないかと思いますが、バンドの展望としてはいかがですか?

川谷:pH-1と一緒に曲を作れたことはすごくよかったです。ラップもめちゃめちゃかっこいいし、こういうかっこいい曲を録音できたこと自体が嬉しいですね。それにこういうコラボレーションを一回やったことによって、もし今後海外を視野に入れたときに、前よりもやりやすくなるとは思うんです。映画の一作目はなかなか出演者が決まらないけど、二作目だと実績があるから出てくれる、みたいなのと一緒で。

―今回のコラボレーションそのものからは、どんな発見がありましたか?

川谷:これまではずっと4人で作ってきたけど、そこに他の人が入っても大丈夫というか、誰が入ってもインディゴはインディゴだなって、そう思えたのは大きかったですね。もちろん、今回の曲が作れたこと自体もバンドの歴史としては大事なことで、コロナで一回視野が狭くなってた部分もあったと思うけど、海外でも広く聴かれて欲しい気持ちは前よりも大きくなりました。あと、韓国っていう国はやっぱりすごいと思いましたね。

―それはどういう部分で?

川谷:やっぱり音楽の筋力があるというか、鍛え上げられたものがあるなって。今や韓国の音楽は世界中で聞かれているし、でも、日本のシティ・ポップもそうだったりするわけで、自分たちとしてもいずれはそういうものを生み出さないといけないという想いも強くなりました。

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