『マスクド・シンガー』制作者が手がける新オーディション番組、売りは「拡張現実」

『Alter Ego』に登場したアバターのSafara(出場者はマリア・ロザリオさん)(Courtesy of Fox)

日本でも「The Masked Singer Japan」が制作されるなど、アメリカで人気を集めた音楽番組『ザ・マスクド・シンガー』のクリエイティブ・プロデューサー、マイケル・ジンマンが新たな音楽番組をスタートさせた。CGIのアバターに姿を変えたシンガーたちが、審査員のグライムス、ウィル・アイ・アム、アラニス・モリセット、ニッキー・ラシェイの前で競い合う新番組『Alter Ego』の舞台裏をレポートする。

【動画を見る】審査員の前でパフォーマンスするのはアバターたち

FOXの新しいヴォーカル・オーディション番組『Alter Ego』では、出場者がパフォーマンスするのはステージの上ではなく舞台裏。彼らが身に着けたモーションキャプチャー・スーツが、幻想的なARのアバターをコントロールするのだ。

優勝者は賞金(10万ドル)と審査員(ウィル・アイ・アム、グライムス、アラニス・モリセット、ニック・ラシェイ)の指導を受けられるチャンスを手にする。だが審査員や司会者や観覧席の観客が見つめるのは、部屋のあちこちに置かれたモニター。さもセンターステージを見ているかのように、あえて目の高さに置かれている。その上審査員は、優勝が決まるまで勝者の正体を知ることはできない。

『Alter Ego』の収録では14台のカメラが頼りだ。そのうち8台は最新のカメラ追跡テクノロジーを搭載している。「前代未聞のことです」と、まだ誰もいないスタジオでクリエイティブ・プロデューサーのマイケル・ジンマンはローリングストーン誌に語った。頭上には、いわばカメラにとっての地図となる1インチ角のシルバーの赤外線反射マーカー数千個が、小宇宙のごとく輝いている。

そのあと高機能カメラがビデオゲーム用デザインソフトウェアUnreal Engineと通信し、リアルタイムでアバターを生成する(2020年にメジャーリーグでバーチャル観客を作成した会社Silver Spoonが、事前に出場者のアイデアを盛り込んで3Dモデルをデザイン。ステージの配置にはAR制作会社のLuluが協力している)。

アバターのデータ(瞳の色、身長、特殊効果など)、モーションキャプチャーからのデータ、照明データ、カメラのデータは全て、実際のステージの裏に設置された小ステージ横の中央サーバーに集められる。「あとは、全てが上手くいけば、合成物が吐き出されて完成です」とジンマンは説明する。唯一演技を求められるのは司会者のロッシ・ディアスだけ。パフォーマンス後に批評を受ける際、アバターの隣に立つのが彼女の仕事だ。「5歳のころの自分に戻って、ごっこ遊びをしながら、空想の友達とおしゃべりしなきゃならないの」と彼女は言う。「実際、すごく面白いわよ」


ダシャーラ・ブリッジスさんとアバターのQueen Dynamite(Courtesy of Fox)

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE