「泉谷しげるデビュー50周年」本人と振り返る、ワーナーとビクター時代



田家:「春夏秋冬」をお聴きいただいております。かっこいいですね。

泉谷:すごいメンバーが集ってくれて。今こうやって聴いてみると、よくこの頃、やつらと喧嘩したなと思って。やっぱり、メンバーは音楽的レベルが高い人たちだから、音楽にしようとするんですよ。私は「音楽にするな」というね。やつらは「じゃあ、何にするんだ」って、「以上なものにしろ」という言い方が常に対立してて。結局、これもよく聴いてもらうと、下山淳のギターがかっこいいんだけど、U2でもあるわけで。

田家:たしかに似てるところはある。

泉谷:「オリジナルを作れ」ということで喧嘩するわけです。この頃、資料としてディランやU2を持ってきたり。「だから、そうじゃなくて! 音楽的評価を得たいんじゃないんだ」と。だから、精度を上げるのはそういうことなんだ。つまり、影響を与える側に回れと。

田家:何々風にするんじゃないんだと。

泉谷:「何々風にするんじゃねえ、馬鹿!」ってしょっちゅう怒ってましたね。

田家:『IZUMIYA-SELF COVERS』の中心になっているのが、LOSER、ドラム・村上"ポンタ"秀一さん。ベース・吉田健さん、ギター・下山淳さん、仲井戸麗市さん。このアルバムには鮎川誠さん、山口冨士夫さん、元ティアドロップス、ダイナマイツですね、ホッピー神山さん。RCのGee2wooさん。ボ・ガンボスのKyonさん。ムーンライダーズの武川雅寛さん。プライベーツの延原達治さん。SION、金子マリさん。忌野清志郎さん。すごいメンツが集まった。

泉谷:そうですね。おそらく、ビクターが力を入れてくれたということなんでしょうけどね。

田家:そういう中で喧嘩してた(笑)。

泉谷:喧嘩してましたね。向こうは音楽をやりたいから。そこで唯一独特なものを出しているのが、仲井戸麗市だけだったんですね。彼のギターは真似できないですよ。あの人だけのものなんですね。

田家:でも、これだけのメンバーで歌っていると、歌っていて気持ちよかったんじゃないですか?

泉谷:それはそうですよ。もちろん彼らも歌が中心だと言ってくれているから、歌の精度が1番で。それだけ文句を言うと、歌もちゃんとしてないとえらいことになるから(笑)。

田家:1週目でおかけした「春夏秋冬」と『IZUMIYA-SELF COVERS』の「春夏秋冬」を比べると、泉谷さんの歌も全然違いますもんね。

泉谷:声の音域とか、随分声も出るようになったし。真面目にガチガチに歌うのではなく、いかに力を使わないか。前は怒鳴り散らしたり、わざと声を枯らしたり、「どうだ! 迫力あるぞ!」みたいなことを散々やってきたけど、太極拳的にリズムのノリに合わせて横にゆっくり揺れる。

田家:そこに至る10年というのが今日のテーマでもあるわけですが、その間に役者もあるわけで。78年10月に出た『’80のバラッド』からお聴きいただきます。

Rolling Stone Japan 編集部

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