決死のカブール脱出、女優兼監督が語った一部始終

異様な沈黙と圧迫感

カブールでは、朝7時から夜の8時まで3日間毎日空港に通い続け、バックパックひとつでゲートをどうにか通り抜けようとするアフガン系米国人男性がいた。彼はツテを頼って、まだ従軍しているアフガニスタン軍の特殊部隊員に連絡し、どうにか脱出する手段を探っていた。また別のアフガン系米国人女性は、ゲートへ4日間通った。彼女は手に怪我を負っていたが、彼女の運転手はタリバンに腕を折られたという。彼女は、ゲートを乗り越えさせようと人が人を押し上げる様子をビデオに収めていた。信じられないさまざまな異常な出来事が起きていたわ。

カブールのハイル・ハナ地区では、半袖の上着を着て腕を出していた少女がタリバンに腕を撃たれた上に、黒の装甲車で連れ去られたという。また、2人の女性ジャーナリストが追い回された挙句に、ひとりは逃げられたが、もうひとりは拘束されてしまった。今では、ジャーナリスト同士が検閲し合っている状況だ。テレビ番組のキャスターは、タリバンのメンバーに置き換わっている。タリバンが皆を黙らせているのよ。

2020年にドーハで米国とタリバンが交渉した時の議題のひとつに、女性の教育があった。アフガニスタンの女性は高校までは行けても、大学へは進めない。女性にとっての不幸はまだあるわ。かつては海外と同じように、どの世代の女性もレストランやコーヒーショップへ行き、成長ビジネスに関わり、特に若い世代は自己主張して、デートしたり、若い女性でも独り立ちしてキャリアを積んで、独立した生活を送っていたものよ。今では、仕事からも大学教育からも追いやられている。女性はデートに出かけることができない。女性は自分が望むパートナーを選ぶこともできない。タリバンは若い女性や未亡人を拉致し、組織の戦闘員と無理やり結婚させている。女性に対する肉体的な暴力や性的暴力がさらに横行する状況よ。正義などない。イスラム法では、「ジーナ」という犯罪行為が定められている。女性が婚外の性行為を行うことは罪であり、刑罰を受ける。男性であってもタリバンのメンバーでなければ、罰せられる可能性がある。

男性の権利もまた侵害されている。最初に付き合った女性と必ずしも結婚したいと思わない若い男性も多い。奇抜な格好をしたり、現代アートや変わったことに興味を持つ進歩的な男性もいる。彼らもまた、リスクにさらされている。

私は母と一緒に、家族を出国させるために動いている。いとこの8歳になる一番下の子は、彼女にすがり、「僕がもっとお兄ちゃんなら、お姉ちゃんたちを敵から守ってあげられるのに」と言って泣いているという。彼の姉は10歳、12歳と13歳だ。彼の母親であるいとこも、震えていた。

カブールにいる友人によると、誰も怖がって外へ出ようとしないという。外ではタリバンが睨みを利かせている。彼らの気に障ると殺されてしまうのではないかと、恐れているのよ。異様な沈黙と圧迫感だという。活動する時も、そっと密かに動いている。男性たちは皆、現代的な服装からアフガニスタンの伝統的な衣装に着替えたらしいわ。

私が成長期にあった1990年代に聞いた話では、タリバンが殺害した人々を道端に放置し、家族が葬儀や埋葬をするために遺体を回収することすら許されなかったというわ。遺体は犬に食べられたのよ。最近のカンダハルでも、多くの遺体が道端に放置され、触れることが許されなかった。石を投げつけられた女性もいたというけれど、「この時代に石打ちの刑を行なっている国がまだあるなんて」という感じだわ。

ニュースを見るたびに涙が溢れてくる。とても直視できない。「ここへおいで。面倒を見てあげるから」という人たちに囲まれている私は、幸せ者よ。とても感謝している。

私の心がパニックでつぶれてしまわないように、創造と破壊、そして死も人生の一部だと理解するための特別な場所を、自分の心の中に作ろうと努力しているわ。私だけでなく、おそらく多くの人たちが声をあげて責任を追求し、互いを支え合おうとしている。今こうして心を癒す時間を持てることに感謝している。アフガニスタン人を大切に扱ってくれた米軍の兵士たちにも感謝するわ。米国国民であることも誇りに感じる。でも今この瞬間にカブールにいられないことを腹立たしく感じるし、ショックでもある。カブールへ戻りたい。

from Rolling Stone US

Translated by Smokva Tokyo

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