決死のカブール脱出、女優兼監督が語った一部始終

いつもと変わらぬ日常、突然の出来事

カンダハルが陥落したと聞いた時は、ショックだった。アフガニスタンの中でも特に広い州だから。国内の各地が次々と攻め落とされていく中で、カンダハルが落ちた時は本当に不安が大きくなった。次にヘラートも制圧され、1日に3つの大都市が陥落してしまった。

ショックを受けたけれども、私の周りではまだいつもどおりの生活が続いていた。私は両親たちと、行きつけのレストランへ出かけた。子どもたちはアヒルに駆け寄って遊び、皆は「これからどうするの? このまま残るの?」という感じで気楽におしゃべりしながらアフガニスタン料理を楽しんだ。しかしその間も状況は進行していた。

翌日、さらにいくつかの州がタリバンの手に落ちた。現実世界で文字通り、ドミノ倒しを目にすることになった。カンダハルが陥落した直後、空港に近い安全なホテルのコンパウンドへ避難するように言われた。でも私は「大丈夫。私は逃げたくない。できないわ」と答えた。それでも航空券だけは押さえておこうと思ったけれど、チケットを取るのに一晩中かかった。予約しようとしても、すぐに完売になってしまう状況だったの。それでも最終的に、8月18日の飛行機を予約できたわ。15日の深夜1時頃に荷造りをしていると、友だちからメールが来て、パグマンが陥落したと教えてくれた。カブールから1時間の場所よ。「早く荷造りを済ませなさい」と言われたので、また徹夜で服や靴を詰め始めた。私の荷物の大部分は、映画撮影用の移動式機材だった。私の友だちが軍のコネを使って、安全なホテルのコンパウンドを偽名で3泊予約してくれた。なぜそんなことをするのかわからなかったけれど、私の安全のためだと言われたわ。私はどうにか避難することができた。コンパウンドは、誰もが簡単にアクセスできない安全な場所にあった。

AFP通信の知り合いから、カブールの街は混乱して無秩序状態になりそうだと聞いた。それまでも既に、強盗が横行していることは知っていた。昼になって私は、ATMで現金を下ろすために短時間だけ外出することにした。そこで目にしたのは、誰もいない街の奇妙な様子だった。いつもは賑わっているシャフレ・ナウ地区にも、ほとんど車が通っていなかった。2ブロック先のATMまで行くタクシーを捕まえることすらできなかった。行きつけのスーパーマーケットまで行くと、親切な運転手がATMまで送ってくれた。ATMは閉まっていて、小さな覗き穴から怯えた目をした係員に「営業していない。ATMに現金も入っていない」と言われたわ。すべての銀行のATMが空っぽの状態だった。みんなお店を閉めて逃げ出していた。大人がまるでホラー映画を見た子どものように怯える姿を見ると、心が痛んだ。しかも現実の世界で起きているということに、胸が張り裂けそうだったわ。

Translated by Smokva Tokyo

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