煮ル果実が語る、新作ミニアルバムに込めた矛盾や葛藤への肯定

―「アンチドート」は冒頭の効果音から映像を想像させる曲ですね。どんなイメージで作った曲か教えてください。

伝わっていてうれしいです。この曲は頭の中で映像をを作るつもりで作っていたので。最初の部分は、アーティストの公式MVなどでよくある曲が始まる前の何もない尺があるじゃないですか? あの部分を作ってみたかったんです。それで、日常の中でいきなり銃がぶっ放されて壊れる様をまず最初に示そうと思って音を組み立てていきました。その阿鼻叫喚の中で、平坦に淡々としたリズムでダンスミュージックが流れてるっていう、映像的な表現で生み出された曲だと思っています。曲のテーマに関しては、何かが気に食わない、退けたいという気持ちって誰しもあると思うんですけど、でもそれは根本的には誰にもわかってもらえないことが多いんですよね。しかも、いずれ時がくれば消えてしまうと思うんですけど、そのときの屈辱や気持ちは、忘れずに持っておかないと次の成長はできないと思うんです。でも、その気持ちの昂ぶりとかを理由に他人に危害を加えるのは、最低最悪だと思うので、これも矛盾に近いんですけど、そういったことを全般的に皮肉った曲だと思います。

―今社会で起きていること、テレビやネットのニュースで見ることがリアルに曲に反映されていますよね。

リアルタイムで起きていることが自分の中のインスピレーションになっていたりするので。今回の作品はそういう部分を切り取ったというのはありますね。

―ジャケットは、どんな方がどんなイメージで作った作品でしょうか。

カンタロさん(ゲーム開発者でありイラストレーターとしても活躍)に、アルバムのテーマ、楽曲を全部聴いてもらった上で作成してもらいました。ポップアートの代表的なアーティスト、ロイ・リキテンスタインのリスペクトに溢れるイラストになっています。猿が手に持っている花は、勿忘草です。花言葉も含めて、カンタロさんがこのアルバムに共感してくださった部分がにじみ出ていると思います。

―今作に限らず、煮ル果実さんの音楽には、もともと絵画やポップアートの影響もかなりあるんですか。

昔からずっと根源的にあるというよりは、今自分が生きていて最近見たものに影響を受けていると思います。そういうモチーフみたいなものが好きで、今回も「サルバドール」は、とある有名な画家をイメージして書いているんですけど、これもちょっと前に彼の経歴を見たりして、「こんな面白い人がいるんだ」っていうのを感じたんです。そんな風にいろんな分野にアンテナは張ってるんですよね。そうしたら、多種多様な面白いものが見つかって曲にできるし、その出会いって運命的なものがあるので。だから、できているかはさておき、他人とは違う着眼点で作品を作りたいとは常々思っています。



Rolling Stone Japan 編集部

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