性行為中に避妊具外す「ステルシング」罰する新法案、米で成立間近

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ドラマの世界にも登場する「ステルシングの被害者」

だがブロドスキー氏の論文はこうした行為の認知度を高めた。「私が抱く法律上の疑問は、こうした害は既存の性的暴力の範疇に収まるのだろうか? もし収まるなら、裁判で被害者たちに勝ち目はあるのだろうか? 被害者にとって意味のある法的救済とは?」。論文は広まり、ステルシングの蔓延について徹底した研究が行われることになった。2019年のとある論文の著者は、アンケート回答者のうちステルシングされた経験者は2%程度だろうと予測した。ところが驚いたことに、パートナーが同意なくコンドームを外した経験がある、と答えた回答者は女性が32%、男性は19%近くに上った。HBOのドラマ『I May Destroy You(原題)』も、主人公のアラベラ(ミカエラ・コール)がステルシングの被害者という設定だ。

カリフォルニア州の法案以前にも、ニューヨーク州などがステルシングを一種の性的暴力とみなす独自の州法を可決しようと試みた(法案は委員会の段階で否決された)。他の国のほうが成功例は多い。ニュージーランドでは今年初め、セックスワーカーとの行為中にステルシングを行った罪で男性1人が起訴され、懲役3年9カ月が言い渡された。スイスやカナダ、ドイツでも、同様の行為で罪に問われた男性が起訴されている。

ブロドスキー氏はカリフォルニア州法の成立に喜ぶと同時に、ステルシングは必ずしも犯罪化するべきではないと感じているそうだ。「刑事司法制度になれば、犠牲者以外の人々が事件の進め方を決めることになります。警察は捜査すべきかどうかを、検事局は立件すべきかどうかを決めなくてはなりません。犠牲者が陪審員から票が集まらなければ、違反そのものと同じくらい屈辱的な経験になるでしょう」と同氏。民事裁判では、「被害者は選択することができます」。既存の法制度のもとで被告を起訴しようとするよりも、同意なきコンドーム除去にしぼった独自の法律を設けるほうが、被害者にとっても有益になる。「性に積極的な犠牲者は、裁判でしばしば疑いの目を向けられます」とブロドスキー氏。「既存の制度に無理やり押し込めるよりも、害にはっきりした名称を付けたほうが裁判でも理解されやすくなるでしょう……この問題に関する議論が世間で広まるほど、犠牲者もより堂々と自分たちの経験を表現し、名乗り出ることができます」

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Translated by Akiko Kato

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