Emerald・中野陽介と手島将彦が語る、音楽家として追求する「心豊かでいるための音楽」

ー新しいものが出てくる中で、取り巻く環境にも意識がいったと。

中野:そういう観点から見ていくと、オリンピックとかコロナの喧騒も逆に新しいストレスが生まれてきましたね。何かしらの怒りやステートメントを表明しなくてはいけないような焦りに苛まれるんですよね。僕は昨今のこの状況は正直めちゃくちゃ怒っているし理不尽だと思ってるから表現したいけど、僕に影響力がないことにも対する怒りが優ってしまいますよね。打てば響く状況の中で、クリティカルなものを発言していきたいです。でも、自分のファンとかに間違った印象や情報を拡散してしまうことが怖いので、慎重になるんです。社会に対する視座も軸を持って捉えてるんですけど、でもいくらやってもキリがなくて。最近はそれで悩むことがストレスになってきてて、SNSも見ないようにしたりしています。

手島:SNSは精神的に負担が大きいですね。SNSは今避けて通れないとはいえ、正直面倒くさいところもありますよね。

中野:窓口や発信の方法を変えていこうかなって色々考えてはいますね。やっぱSIRUPとかstarRoさんとかは僕の中ではある種理想のアーティストの形だと思っていて。発信の仕方もそうだし、こういうアーティストが同時代にいることがすごく心強いというか。自分の軸をぶらさずに発信し続けられている人たちで、僕もそうなりたいなっていう新しい目標もできましたね。

手島:そこには社会や政治に対する意見もそのひとつとして含まれますけど、僕はアーティストにもっとその「生き方」を表現して発信してくれればいいなと思ってるんですよ。もうAIが曲を作れて歌も歌える時代です。だからBGM的に気持ち良い心地良い音楽を消費したいのなら、生身の人間が作る必要は無くなってきているんですよね。でもやっぱり人間の音楽を聴きたいというのは残ると思うんですよ。オリンピックとかそうだけど、100mを早く走ったからっていって、絶対チーターの方が早いって分かってる。でも、やっぱり人間がやってるから「すごい」って心が動かされる。なぜ心が動かされるかと言うと、そこには、その人の生き方や人生、そこに至るまでの人間の社会の歴史とかが含まれていて、そうしたもの全部含めてその人から発する何かがあるからだと思うんですよ。そういう意味で、人の生き様とか主張とかは表に出てる方がいいなと思いますね。

Rolling Stone Japan 編集部

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