Emerald・中野陽介と手島将彦が語る、音楽家として追求する「心豊かでいるための音楽」

ー最後に、中野さんから手島さんにお伺いしたいことはありますか?

中野:手島さんはジャーナリズム的な観点からも記事やブログを書いていますよね。そういうのを念頭に置いたライナーノーツって書いたりするんですか? 記事を見ると、かなりクリティカルな角度から音楽の情報を受け取ってるなと思っていて。アーティストとかの歌詞、心とか社会模様への感性って古いフォークとか聞いてないと出てこないですよね。大袈裟な言葉じゃないと響かなくなっている世の中で、すごくシンプルな言葉や行間から色々な情報を受け取れるのって、この世代で生きてきてよかったポイントなんですよね。

手島:最近いろんな騒動を発端に1990年代とか1980年代末のカルチャーが取り上げられてるんですけど、僕はそこがどっぷり青春時代で。社会に経済的な余裕があったので、煌びやかなとこや、色々なことができたというのがあの時代の良さなんですよね。僕が音楽を仕事にしていくきっかけとなった出身母体もいわゆる渋谷系界隈でした。でも、なんか好かないなあこの界隈って思うことがたくさんあって、飛び出していったのが1990年代末くらいで。そこから遡っていったんです。何が気にくわないんだろう? 何かを言ってるようで何も言ってない、斜に構えているというよりは単なる冷笑とか傍観みたいな歌詞をオシャレな言葉使いで書くこいつらのメンタリティはどこから来ているんだ、と思いながら、より深く遡って聴き始めたんですよね(笑)。

中野:その話あと1時間くらい聞きたいです(笑)。僕は結局、時代に合わせた、燃料をひたすら回すためのような音楽を作るのはどうしてもできないんだなと思ったんです。そういう人間でも音楽をやって生きていて、たくさんの人に聞いてもらえるというのを証明したくてやってるというのもあるんですよね。「うっせぇわ」とかもそうだけど、目の前に強い言葉が並んで情報量で圧倒するような言葉がメインになって音楽が作られていて。僕はもっと言葉の奥とか、見えないところまで感じさせたい言葉を選んでいくんですけど、そうなると抽象的になっていくじゃないですか。それが受け入れられにくい時代だなというのは感じていて。そういう時代の中にいても、手島さんは抽象的なもの汲み取れる文章を書く人だなと感じているんです。そういう人にEmeraldのライナーノーツとか書いてほしいなと思っていました。



手島:僕で何か書けるようであれば頑張って書きます(笑)。「うっせぇわ」とかも注意引いたら勝ち、情報量多い方が勝ちみたいな感じって、僕がさっき話した1980〜90年代の話と全部じゃないけど同じように感じるんですよね。情報量なのか注意なのか、あるいは逆張りして上手くいったらいいのかみたいな。それがもう一回やってきたなという感じもして。

中野:僕らはブレずに一本筋を通して歌を紡いでいきたいという拘りを伝えたいと思っているんです。だから、色々な音楽が起こっては過ぎ去っていっても、ここに帰ってくればふかふかなベッドがあるなっていう音楽を作りたいなと思うんですよ。その観点でEmeraldのこれまでの音楽を聴くと、すごく落ち着くんですよね。それをこれからもやっていく中で、色々感じることをまたお話できたらと思います。



<リリース情報>



Emerald
シングル『Sunrise Love』
配信中







Emerald
シングル『Re:ふれたい光』

配信日:2021年7月30日(金)
品番:MPLR-0014
配信中

<ライブ情報>




Emerald Pre. 10th Anniversary ONEMAN Party
『TEN』

2022年1月22日(土)渋谷WWW X
時間:open 17:00 / start 17:30
料金:前売 4000円 / 当日 4500円 / アナログ付前売 6000円

プレイガイド:
●e+(チケット先行販売はe+にて)
●ローソンチケット
●チケットぴあ
https://eplus.jp/emerald21-official/


Emerald Official Site:
http://emerald-info.tokyo/

<書籍情報>




手島将彦
『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』

発売元:SW
発売日:2019年9月20日(金)
224ページ ソフトカバー並製
本体定価:1500円(税抜)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909877029

本田秀夫(精神科医)コメント
個性的であることが評価される一方で、産業として成立することも求められるアーティストたち。すぐれた作品を出す一方で、私生活ではさまざまな苦悩を経験する人も多い。この本は、個性を生かしながら生活上の問題の解決をはかるためのカウンセリングについて書かれている。アーティスト/音楽学校教師/産業カウンセラーの顔をもつ手島将彦氏による、説得力のある論考である。

Rolling Stone Japan 編集部

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