追悼チャーリー・ワッツ 誰が何をしようと動じない妥協なき音楽人生

チャーリー・ワッツ(1978年)(Photo by Michael Putland/Getty Images)


筆者がお気に入りのアルバムの1枚に、『Their Satanic Majesties Request』がある。バンドの中で、チャーリーだけがロックンロールをプレイしているからだ。ストーンズがサイケデリックなどに手を出している(アルバムジャケットでミックは魔法使いの帽子をかぶっている)間も、チャーリーは「Citadel」や「2000 Light Years From Home」で聴かれるように、ドラムでバンドを激励している。フラワーチャイルドと化したストーンズが薬で破滅しないように、しっかりと支えていたのはチャーリーなのだ。「Dandelion」のコーラスの裏で叱咤する彼のドラムを聴けば、チャーリーの存在感がよくわかる。

2019年のツアー中もいくつかのコンサートを取材した。チャーリーは最後まで絶対的なモンスターで、特にチャーリー抜きでは始まらない「Midnight Rambler」は秀逸だった。多くのストーンズの楽曲と同様、誰も同曲をカバーしないのは、チャーリーのドラムを誰も真似できないからだ。ミック・ジャガーとロン・ウッドがスタジアムを駆け回る。キース・リチャーズは、ドラムキットの前でリフを弾いている。彼らのしていることは理解しやすい。しかし、チャーリーの存在意義は何だろうか? 彼を駆り立てているものは何か? なぜ彼はそこでドラムを叩いているのか? 「Midnight Rambler」に答えがあった。バンドには“彼の”グルーヴが欠かせない。彼はなくてはならない存在なのだ。

ツアー中に毎晩、ステージの前面でストーンズの4人組だけがスポットライトを浴びる瞬間があった。チャーリーのドラムだけに皆が反応する。スタジアム全体が同じ感覚を共有した瞬間だ。他の3人のメンバーは、従うべき基準はチャーリーだということを心得ていた。

チャーリーがリードするアルバムという意味で、『Black and Blue』や『Emotional Rescue』などが頭に浮かぶ。しかしどのアルバムのコンセプトも同様で、チャーリーのドラムに合わせてストーンズがプレイしているのだ。チャーリーが究極のロックンロール・ドラムの神様たる所以がここにある。キース・ムーンやジョン・ボーナムがストリートファイターだとすれば、チャーリーは静かなるヒットマンだ。自分が撃たれるまで、彼の存在に気づくことがない。チャーリーはスポットライトを嫌った。毎日毎晩、何年間も、淡々と自分の仕事をこなしながら、ステージ上から人々を圧倒し続けた。

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「Connection」や「Sympathy for the Devil」、さらに「Let Me Go」、「Dirty Work」、「Rocks Off」、「Stray Cat Blues」など、チャーリーにまつわる話をし始めたら一晩では足りない。「Shake Your Hips」(アルバム『Exile on Main St.』に収録されたスリム・ハーポの楽曲)で、彼を送ろう。チャーリーは、バンドをタイトにまとめようとじっと耐えながら、55秒のところで“ポン!”と、ひとつ強く叩く。しかし彼はまた、いつもの淡々としたプレイに戻っていくのだ。

58年間に渡り、ローリング・ストーンズがこの世で唯一従ってきた人物がチャーリー・ワッツであったことを象徴する楽曲のひとつだろう。ドラマーとして、ストーンズを世界で最も偉大なロックンロール・バンドたらしめたチャーリー・ワッツよ、永遠に。

From Rolling Stone US.

Translated by Smokva Tokyo

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