チャーリー・ワッツ秘蔵インタビュー「僕がロックを一緒にプレイするのは彼らだけ」

チャーリー・ワッツ、2013年撮影(Photo by Andy Sheppard/Redferns/Getty Images)


チャーリーの根幹にあった「ジャズ」

チャーリーはソロ名義でジャズのアルバムを10枚発表しており、そのスタイルは多岐にわたる。1作目はトランペッター7人、トロンボーン奏者4人、アルトサックスのプレイヤー3人、テナーサックス奏者6人、バリトンサックス、クラリネット、ヴィブラフォン奏者2人、ピアノ、ベーシスト2人、ジャック・ブルースが務めたチェロ、そしてドラマー3人という大編成のチャーリー・ワッツ・オーケストラ名義で1986年に発表した『Live at Fulham Town Hall』だ。楽曲は大胆にアレンジされ、テナーサックスが吹き荒れる「Lester Leaps In」を含むいくつかの曲は猛スピードでプレイされている。



さらにテンテット、クインテット、ビッグバンド(「You Can’t Always Get What You Want」と「Paint It, Black」をカバー)等の編成でも作品を発表しているほか、チャーリー・パーカーのトリビュートも2作残している。ストーンズの作品で長くバックコーラスを務めているバーナード・ファウラーが参加した、アメリカン・ソングブックのスタンダードを集めたゴージャスな『Warm & Tender』(1993年)『Long Ago & Far Away』(1996年)も一聴の価値ありだ。

一方歌モノのアルバムでは、チャーリーは慕情や喪失をテーマにした曲のバックで消えゆく鼓動のような穏やかなリズムを鳴らしている。だが彼のディスコグラフィーにおける最大の野心作は、エリック・クラプトンやライ・クーダー、デラニー&ボニー、ボブ・ディラン、ジョージ・ハリスン、ジョン・レノン、リンゴ・スター、ガボール・ザボ等、錚々たるアーティストたちのバンドでドラムを叩いてるジム・ケルトナーと共作した、偉大なジャズドラマーたちへのトリビュート作品だろう(2000年リリースの『Charlie Watts Jim Keltner Project』)。

筆者がビバリーヒルズにあるホテルの小さなカンファレンスルームでチャーリーと会った時、彼はオールバックにした髪よりもやや色の濃い、仕立ての良さそうなグレイのスーツに身を包んでいた。彼は脚を組み、交差させた両手をその上に置いていた。筆者はチャーリーに、彼とジム・ケルトナーが「Kenny Clarke」「Roy Haynes」「Max Roach」「The Elvin Suite」等を含む9つのトリビュート曲をプレイするプロジェクトが特に好きだと伝えた。尊敬するドラマーたちのスタイルを模倣するのではなく、2人はそれぞれの個性を大いに発揮しているが、「Airto」に限ってはマイルス・デイヴィスが70年代に率いたアンサンブルのメンバーだったブラジル人パーカッショニスト、アイアート・モレイラのサウンドを比較的忠実に再現している。

だが作品の大部分では、チャーリーとケルトナーは非一般的なアンサンブルのほか、時折使用されるループやエレクトロニクス、そして西アフリカ譲りのリズミカルなグルーヴなどを用いながら、9人のドラマーたちへの敬意を抽象的な形で表現している。アート・ブレイキーとトニー・ウィリアムスにちなんで名付けられた曲が特に好きだと伝えると、彼は筆者がそのアルバムを知っていることに驚き、感謝してくれているようだった。



チャーリーによるジャズ・レコードは作品として優れているだけでなく、ローリング・ストーンズにおける彼の役割の理解を深めるためのヒントにもなっていると筆者は考える。『Watts at Scott’s』(2004年)において一流のテンテットを従えた彼のドラミングを聞くと、長年にわたるエレクトリック・ブルースやポップバンドでの仕事を通じて考えつき、温め続けてきたビートの数々が一気に開花したかのように感じられる。異なるアイデア同士を組み合わせるこのアルバムからは、まるでドラミングの歴史そのものが浮かび上がってくるようだ。それはブレイキーやマックス・ローチのようなブルースを軸としたドラマーや、チャーリーに最も影響を与えた存在の1人であるエルヴィン・ジョーンズのスタイル、そしてストーンズの作品でのチャーリー自身によるカミソリの刃のように鋭いスウィングまで網羅する。タイプが大きく異なるドラマーであるケルトナーとともに、チャーリーはそれらを紡ぎ合わせていく。

Translated by Masaaki Yoshida

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