1100万円で落札のチキンナゲット、「児童人身売買」陰謀論の引き金に

偽情報を拡散しやすいTikTok

以前ローリングストーン誌も報じたように、こうしたとんでもない売春取引デマはTikTokから発生する傾向にあるが、その理由は同プラットフォームのフォーマットにも一理ある。人目を惹くものの、誤った内容のコンテンツが驚くような速さで拡散しているのだ。「パニックを起こす動画は人々の関心を集めます」。偽情報を研究するアビー・リチャーズ氏は以前、ローリングストーン誌にこう語った。「誰かが『どうしよう、私の身にこんなことが起こった』と言っている動画を見ただけで、あっというまに拡散するんです」。TikTokのFor Youページでは、ユーザーの興味に合うようにアルゴリズムで操作されたコンテンツが発信され、拡散偽情報を正すコンテンツが浮上するチャンスはほとんどない。

TikTokが活動家向けのプラットフォームになりつつあることも、反人身売買のコンテンツがエンゲージメントを生みやすくなっている理由だ。「大勢のティーンエイジャーが、TikTokは社会変化を起こすプラットフォームだと本気で考えています。彼らはTikTokで抗議活動を起こし、ムーブメントを広げようとしています」とディーンさんも言う。彼女は保険計理コンサルティング会社の正社員として働いているが、前職は家庭内暴力のシェルターで人身売買の被害者を相手に仕事をしていた。今は前職での経験を誤情報対策に活かしている。「性的人身売買が問題なのはみな知っています。自分たちが(誤情報を)煽っていると子供たちが自覚しているかどうかは、今後議論するべき問題ですね。ですが、みな他の子と同じようにヒーローになりたいだけなんです」

悲しいかな、性的人身売買の現実をとりまく誤情報は、ソーシャルメディアでは益になるどころか害を及ぼすことが多い。人身売買の被害者の大半は、LGBTQや10代のホームレスなど疎外された若者だ。彼らは人身売買業者と顔見知りで、信頼を寄せている。見知らぬ闇の人物が大手eコマースサイト(やファーストフード)を隠れ蓑にして人身売買を行っている、という説はなんの助けにもならない。そうした説のせいで「人身売買の被害者は自分たちが話題にされていることに気づくこともできず、警察当局やサービスプロバイダーが自分たちの経験を暴行や搾取と認めてくれるだろうと感じることも難しくなります」と、反児童人身売買団体Freedom USAのエグゼクティブ・ディレクター、ジーン・ブラッジマン氏もかつてローリングストーン誌にこう語った。

プラットフォームの本質ゆえに、とくにTikTokはこうしたコンテンツの温床になっているようだ。「動画が拡散すればするほど、削除するのも一層難しくなります」とディーンさんも言う。

From Rolling Stone US.

Translated by Akiko Kato

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