ソウルとディスコの未来を先取りするUK本格派、ジャングルの卓越した音楽センスを考察

『Loving in Stereo』の新規軸

そして、『For Ever』から3年を経てのニューアルバム『Loving in Stereo』。BBC Radio 1で「Hottest Record in the World」に選出されたエレガントディスコ「Keep Moving」で従来からのファンの期待に正面から応える一方、クラシックなブレイクビーツがもたらす興奮を改めて世に問うような「Talk About It」、ムラ・マサの傑作『R.Y.C.』とも共振するニューウェーブ調パンクロック「Truth」など、音楽的レンジもぐっと広げてきた理想的なサードステップだが、なかでも目をひくのがやはり新機軸となる初の本格的なヒップホップチューン、J・コール率いるドリームヴィルの主力ラッパーBasをフィーチャーした「Romeo」だ(リー・ウィリアムズ&ザ・シンバルズのスウィートソウル「I Love You More」をサンプリングしている)。

アメリカのブラックミュージックに強い憧憬を抱くジョシュとトムは『For Ever』制作時にロサンゼルスに移住するも現地生活の理想と現実のギャップに屈してあえなくロンドンに戻ることになるが、一旦は断念したもののやっぱり彼らはアメリカでのサクセスの夢が捨てきれないのではないかーー「Romeo」でのBasのキャスティングからは、そんなふたりの複雑な胸中が垣間見える。

本国イギリスにおいてデビュー以来安定したセールスを記録しているジャングルはアメリカではまだめぼしい結果を残すには至っていないものの、こうして振り返ってきたようにチャートを賑わしているアーティストとも常に近い感覚を持ち合わせてきた彼らはちょっとしたきっかけさえあればアメリカでのブレイクも手の届く位置につけているといっていい。「Keep Moving」がBillboardのダンス/エレクトロニックチャートで過去最高の29位を記録し、ここにきてディプロ「Don’t Be Afraid」やブリタニー・ハワード「History Repeats (Jungle Remix)」といった注目度の高い仕事が立て続けに舞い込んできている状況を考えても、ジャングルには十分チャンスがあるように思えるのだが。2ndアルバム『Overgrown』を足掛かりにして、ビヨンセ、フランク・オーシャン、トラヴィス・スコット、ジェイ・Z、ケンドリック・ラマーらとのコラボを実現させたジェイムズ・ブレイクのような展開を期待したい。









ジャングル
『Loving In Stereo』
発売中
※日本盤は歌詞対訳・解説、ボーナストラック2曲を追加収録
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11769

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