歴代最高のメタルアルバム100選|2021上半期ベスト

75位 - 71位

75
モービッド・エンジェル
『Covenant』 1993年

キャリア史上最もダークなレコード

ライヴ前に腕をカミソリで傷つけるギタリストと、極端な悪魔崇拝で知られるモービッド・エンジェルは、最初から商業的成功を放棄していたように思える。しかし、ワーナー傘下のGiant Recordsと契約し、彼らはキャリア史上最もダークなレコードを完成させた。トレイ・アザトースのうねるようなリフと突発的なリードギター、ドラマーのピート・“コマンド”・サンドヴァルの連打スネア、そしてデヴィッド・ヴィンセントによる憎悪に満ちた咆哮からなる神への冒涜のようなサウンドは、本作で新たな境地に到達した。悪魔に憑依を懇願する「Rapture」、二部構成の悪魔挽歌「God Of Emptiness」など、キャッチーな曲群においてもカオスっぷりは健在だ。H.S.

74
ヴェノム
『Welcome To Hell』 1981年

猥褻さと大言壮語と不滅のカリスマ性

イギリスで起きた真の音楽革命、それはパンクではなく、悪魔崇拝と酒と女に溺れたヴェノムのデビューだ。常に上半身裸で汗だくのトリオが繰り出す超高速プレイには、あのモーターヘッドさえも慄いたという。何もかもを倍速にしたかのような、あの世のテーマソングたるタイトル曲、そして荒くれ者の賛美歌「Live Like an Angel (Die Like A Devil)」では、容赦ないギターとシンバルとシャウトが一体となって悲鳴のような不協和音を生み出す。だが、そのサウンドはどこまでも美しい。ラモーンズとも肩を並べる存在とされる彼らのデビュー作は、ブラックメタルやデスメタルのゼロ地点として、今なお世界中のメタルヘッズたちから愛されている。I.C.



73
スコーピオンズ
『Blackout』 1982年

バンドの魅力が見事に凝縮された1枚

ドイツのスコーピオンズは70年代を通じて、ウリ・ジョン・ロートのギタープレイが光るハードロック作品を発表し続けていたが、アメリカにおいてはブレイクを果たせずにいた。転機は80年代に入る直前に、ルドルフ・シェンカーとマティアス・ヤプスのギターチームがバンドの核となったこと。黄金期の到来を告げた8作目はバンドの魅力が見事に凝縮された一枚。豪速球のようなリフ、輪郭のはっきりしたプロダクション、ストレートなリズムが支える楽曲に、クラウス・マイネの憂いを帯びたシャウトとヤプスのブルージーなリードギターが華やかさを添え、タフでありながらメロディックというお茶の間に届くハードロックのテンプレートを確立した。R.B.

72
アイシス
 『Oceanic』 2002年

後続に影響を与えたポストメタル

コンヴァージ、ケイヴ・イン、キルスウィッチ・エンゲイジといった同胞たちと出自こそ同じだが、アイシスは独自の音楽性を確立している。アーロン・ターナー率いるバンドには、メルヴィンズやスワンズ、ニューロシスからの影響が見てとれる。かけがえのない女性を探し求める男の物語を描いた本作は、バンドの転機となった一枚だ。前半ではターナーの悲痛な叫びとともに、バンドはダイナミクスの波を自在に操ってみせる。アルバムの最後を飾る「From Sinking」と「Hym」の2曲は、クライマックスに相応しい圧倒的感情の高ぶりを見せる。本作はポストメタルの先駆けとなり、ペリカンやカルト・オブ・ルナなどの後続バンドに絶大な影響を与えた。S.S.



71
リヴィング・カラー
『Vivid』 1988年

ソウルの守護者たる4人組による1st

NYのリヴィング・カラーによるデビュー作は、『Nevermind』前夜の80年代末にチャートを席巻した、スマートかつヘヴィなロックアルバムの一つだ。アート・ファンクなグルーヴ、アヴァンジャズ譲りの卓越したテクニック、速弾きを武器とするバンドのアンサンブルに、コリー・グローヴァーはオーティス・レディングがアクセル・ローズを真似たかのようなシャウトで応戦。4人のアフリカンアメリカンによるバンドは、唯一無二のサウンドでシーンを震撼させた。「俺が50年代にやったことを、彼らは90年代に蘇らせようとしている。ソウルの守護者たる彼らに神のご加護を」。ロック界のレジェンド、リトル・リチャードは1990年にそう語っている。C.R.W.



Translated by Masaaki Yoshida

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