歴代最高のメタルアルバム100選|2021上半期ベスト

90位 - 86位

90
ボディ・カウント
『Body Count』 1992年

LAのホラーめいた日常を描き出す

ラッパーのアイス-T率いるボディ・カウントは、ラヴクラフトやキングの小説に色付けし、歴史上の残虐行為とテレビで報じられるニュースを並べるだけみたいな、80年代の空虚なスラッシュメタルとは一線を画す存在だった。彼らが描いたのは、LAのストリートにおけるホラーめいた日常。ギャングの抗争が繰り広げられる夜、黒人男性の人権を無視する刑務所のシステム、薬物によって人生を台無しにした友人たち、「アホで間抜けでチンカスまみれのクズ政治家ども」という体制批判が、本作の何たるかを物語っている。代表曲「Cop Killer」は、奇しくもロドニー・キング事件の直後に発表され、横暴な警察に憤りを覚える人々のテーマソングとなった。C.R.W.



89
ナイトウィッシュ
『Once』 2004年

オペラとパワーコードの融合

ハロウィン、サヴァタージ、ブラインド・ガーディアン等が80年代に確立したシンフォニックメタルは、抜群のインパクトを誇るフックと壮大なオーケストレーションを融合させた。オケにはシンセサイザーを用いることも多いが、ナイトウィッシュのそれはフル編成のオーケストラによるものだ。プロのソプラノ歌手であるターヤ・トゥルネンを擁するフィンランド発のバンドは、メタルにおけるオペラ的側面とパワーコードの破壊力を融合させることで絶大な人気を得た。彼らはこの5作目で、力強さとメロディの理想的なバランスを確立。ワーグナーのような壮大さを誇る一方、「Nemo」のような曲には音楽的素養なしでは生み出せない親しみやすさがある。A.B.



88
ピッグ・デストロイヤー
『Terrifyer』 2004年

シャワーを浴びたくなるほどダーティ

多くのグラインドコアのバンドは速さと正確さ、残虐さを追求するが、本作ほど凶暴なレコードは滅多にない。当時は3人組だったピッグ・デストロイヤーは、ブラストビートと超高速リフを武器にしつつ、最大の特徴はヘルメットやアンセインに象徴される90年代オルタナメタル譲りの軋むようなサウンドにあった。突進するブルドーザーのようなノイズパンクから、問答無用のドゥームメタルまで作風は多彩。「極めて細部に至るまで、俺たちはスピーディでダーティであることにこだわっている。洗練されてはいないけど、じっとしていられなくなるほど速く、シャワーを浴びたくなるほどダーティだ」スコット・ハル(Gt)は2003年にそう語っている。C.R.W.



87
マノウォー
『Hail To England』 1984年

馬鹿馬鹿しくて大げさでキャッチー

ブロンクスのパンクス集団ディクテーターズを脱退後、ロス・”ザ・ボス”・フリードマン(Gt)は思いがけない方向にハンドルを切り、メタル史上屈指の仰々しさを誇るバンドを結成する。ブラック・サバスのベースも務めたジョーイ・ディマイオをメンバーに迎え、マノウォーは自由なライフスタイルとバイクをこよなく愛する男たちの代弁者としてNYで活動開始。この3作目でバンドの基本形(あるいは当時のパワーメタルの典型)と、ロインクロス姿で剣を振り回しながら「偽メタルに死を」と唱えるイメージを完全に確立した。何もかもが馬鹿馬鹿しいほど大げさだが、フォーカスは一瞬たりともブレることなく、曲は抗いがたくキャッチーだ。R.B.

86
ラム・オブ・ゴッド
『As The Palaces Burn』 2003年

スラッシュの新たな地平を切り開く

ラム・オブ・ゴッドは3作目で目覚ましい進化を遂げた。デヴィン・タウンゼンドによるプロダクションは、マーク・モートンとウィリー・アドラーのカミソリのようなギターリフを一層研ぎ澄ました。クリス・アドラー(Dr)はヒステリックな馬車馬を引っ叩くかのようにバンドをリードし、ランディー・ブライ(Vo)はノイズの渦に血を注ぎ込む。グルーヴを極限まで突き詰めた彼らのスタイルは、スラッシュメタルの新たな地平を切り開いた。「最初の数曲に取りかかった時点で、このアルバムが簡単には真似できないものになると確信した。発売1週間でキッズたちがコピーできるようなものじゃないってことさ」。クリスは2003年にそう語っている。D.E.



Translated by Masaaki Yoshida

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE