歴代最高のメタルアルバム100選|2021上半期ベスト

50位 - 46位

50
スリップノット
『Iowa』 2001年

ダークで無慈悲な美しいレコード

9人のメンバー全員がマスクを被り、打楽器奏者を数多く擁するスリップノットは、衝撃的なデビューアルバムによって中西部の田舎者からメタル界のスターへと転身したが、その自己破壊願望はバンドを自滅させる寸前だった。本作について、シンガーのコリィ・テイラーはRevolver誌にこう語っている。「あのレコードを作っていた頃、俺は何もかもに怒りを覚えてた。何に怒っているのかさえもわからなかったのにね。幸運にも、それはダークで無慈悲な美しいレコードを生み出した」。絶え間なく刻まれるギター、渦巻くようなスネアとタムの応酬、声帯がちぎれてしまいそうなテイラーのシャウト。最大の魅力はネガティブな感情の爆発ではなく、意外なほどフックに重点を置いたソングライティングだ。J.D.C.



49
ニューロシス
『Through Silver In Blood』 1996年

内面にあるものを絞り出す

1985年にサンフランシスコで結成されたニューロシスは、スローでヘヴィかつディープな音楽性を追求したアルバムを数枚発表していたが、本作ではその傾向をさらに推し進めてみせた。ハードコアとインダストリアル、スラッジメタルと様々なサンプリング音を組み合わせた96年発表の本作では、脅迫的なヘヴィネスとヒプノティックな反復パターンに満ちている一方で、意外なほど脆い部分をさらけ出している。「当時の世の中には暗いムードが漂っていて、俺自身も辛い思いをしていた。そういう背景があったからこそ、俺は自分の内面にあるものを絞り出すようなつもりであのレコードを作った」。ギターヴォーカルのスティーヴ・ヴォン・ティルは、2016年にDecibel誌にそう語っている。S.S.



48
レインボー
『Rising』 1976年

容易に理解できるストレートな魅力

ディープ・パープルのファンクへの傾倒に不満を覚えていたリッチー・ブラックモアは、1974年にバンドを脱退した後に、ロニー・ジェイムス・ディオと共にレインボーを結成した。やがて彼らは、ディープ・パープルの代表作にも匹敵する(凌いでいるとする声もある)2ndアルバム『Rising』を完成させる。「あのレコードでの俺のプレイは過去数年でベストだってよく言われるよ。一応褒め言葉として受け取ってるけどな」。短気なことで知られる名ギタリストは、1976年の作品リリース時にそう語っている。「お前に何がわかる、って言ってやりたいけどね」。ブラックモアが率いるバンドの圧倒的にダイナミックなパフォーマンスは、博識でなくとも容易に理解できるストレートな魅力を備えていたのだ。D.E.



47
スレイヤー
『South Of Heaven』 1988年

ソングライティングの魅力を証明

「速さという点では『Reign In Blood』を超えることはできないとわかっていたから、スピードを落とすしかなかった」。ギタリストのジェフ・ハンネマンはDecibel誌にそう語っている。「何をやってもあのレコードと比較されるのはわかりきっていたから、どうせなら思い切りスローダウンしようってことになった。後にも先にも、あんなことを試したアルバムは他にない」。彼の言う通り、本作のスローぶりは顕著だ。しかし、シタールのような雰囲気の静謐なリフで幕を開ける「South Of Heaven」は前作のどの曲よりも不気味であり、「Mandatory Suicide」におけるユニゾンのツインギターは死の香りを漂わせている。スピードとスタミナだけでなく、ソングライティングのスキルもまたバンドの魅力であることを本作で証明した。J.D.C.



46
マストドン
『Leviathan』 2004年

『白鯨』に基づくコンセプトアルバム

15年前の時点でマストドンは知る人ぞ知る存在だった。過酷なツアーの合間にハーマン・メルヴィルの1851年作『白鯨』を読んだドラマーのブラン・デイラーは、そのストーリーと復讐に燃えるエイハブ船長の姿に、自身の経験と重なる部分を感じ取った。「何年もの間、あちこちを転々としながら地下スペースやクラブでプレイしていた俺たちは、エイハブ船長の狂気とイシュメールの冒険への渇望に、バンドと通じるものを感じたんだ」。彼はModern Drummer誌にそう語っている。そのアイデアが2ndアルバムとなる本作を生み出した。津波を思わせるギターと腹の底から絞り出すようなシャウト、そして圧倒的な手数を誇るドラムフィルを聴けば、バンドによるその壮大な試みが成功したことは明らかだ。T.B.



Translated by Masaaki Yoshida

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