歴代最高のメタルアルバム100選|2021上半期ベスト

55位 - 51位

55
オーペス
『Blackwater Park』 2001年

幽玄な迷路のようなランドスケープ

スウェーデン発のオーペスは90年代を通じて、デスメタルとドゥームとプログレを融合させたユニークな音楽性を育み、この5作目でスタイルを確立した。その原動力となったのは、ミカエル・オーカーフェルト(Gt)の磨きがかかった作曲能力とメンバー4人のケミストリーだが、プロデューサーのスティーヴン・ウィルソンが果たした役割も大きい。プログレの雄ポーキュパイン・ツリーの中心人物である彼は、雑多なアイディアを束ね、非の打ち所がないアルバムの枠組みを定めた。パワーと怒り、全編に見られるメロディックなパッセージがアルバム全体に優美なうねりとフロウをもたらし、幽玄な迷路のようなランドスケープを浮かび上がらせる。A.B.



54
ヘルメット
『Meantime』 1992年

削ぎ落とした装飾、シニカルなエッジ

ヘルメットの2作目は80年代のメタルから装飾を削ぎ落とし、ストリートで育まれた冷酷でシニカルなエッジを加えた。変拍子を用いた「Turned Out」で、ベーシストのヘンリー・ボグダンとドラマーのジョン・スタイナー(のちにトマホークやバトルスでも活躍)は癖のあるファンクネスを生み出している。ダウンチューニングを用いた緊張感のあるサウンドは、パンテラやデフトーンズ、リンキン・パークなどに影響を与えているが、リーダーのペイジ・ハミルトン(Gt)はイノベーターとして祭り上げられることに居心地の悪さを覚えていた。彼は1992年に、「ジャズとクラシックとロックの間に境界線を設けるのは非建設的な行為だと思う」と語っている。H.S.



53
タイプ・オー・ネガティブ
『Bloody Kisses』 1993年

1stとは大きく方向性の異なる2nd

タイプ・オー・ネガティブの処女作『Slow, Deep And Hard』は前身のスラッシュメタルバンド、Carnivoreの路線を踏襲していた。しかし、その3年後にバンドが発表したのは、ベールのようなシンセサウンドが歪んだギターを包み込み、フロントマンのピーター・スティールがクルーナーヴォイスで歌い上げるという、前作とは大きく方向性の異なるアルバムだった。あるリスナーは修道士のようなヴォーカルにゴスの感受性を見出し、別のリスナーはシールズ&クロフツ「Summer Breeze」の大真面目なカバーを単なるジョークだとみなした。いずれにせよ、本作がオリジナル版『ダーク・シャドウ』に匹敵するダークなユーモアを備えていることだけは確かだ。J.D.C.



52
デフ・レパード
『Pyromania』 1983年

世界クラスのソングライターへ仲間入り

「スピルバーグの映画みたいなアルバムを作りたかった」。ジョー・エリオット(Vo)は本作のイメージをそう語っている。そのヴィジョンを形にするため、バンドは変幻自在のプロデュースワークで知られるマット・ランジ(AC/DC、カーズなど)を迎えた。約9カ月と100万ドルを費やして完成させた3作目は、最新のシンセサイザー、ドラム音源の使用をはじめとした当時の最先端レコーディング技術、そして無数のレイヤーによって前代未聞の壮大さを演出したヴォーカルを堪能することができる。ヘヴィなリフとアンセミックで大衆受けするメロディを違和感なく融合させる術を確立した本作は大ヒットを記録。世界的人気バンドの仲間入りを果たした。T.B.



51
カーカス
『Heartwork』 1993年

独自の進化を遂げた複雑さと不気味さ

カーカスが本作で遂げた劇的な変化を要約することは、今日でも容易なことではない。ビル・スティアー(Gt)、ジェフ・ウォーカー(Vo, Ba)、ケン・オーウェン(Dr)がリバプールで結成したグラインドコアのパイオニアは、医療用語辞典から引用したグロテスクな歌詞と強烈なサウンドで独自の存在感を放っていた。しかし、1990年にマイケル・アモットをセカンドギターに迎えると音楽性は洗練され、1993年の時点で複雑さと不気味さは独自の進化を遂げていた。スティアーとアモットによるリフと変幻自在のリードギター、社会問題に言及したウォーカーの歌詞が組み合わさったストレートな楽曲は、セールス面での成功も呼び込んだ。S.S.



Translated by Masaaki Yoshida

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE