亀田誠治が語る松本隆トリビュートアルバム「全亀田を投入した」



田家:先ほど仰った、この曲が細野さんと松本さんのコンビのベストソング的である理由をもう少し詳しく教えていただけますか?

亀田:細野さんのコードワークの美しさですよね。「ガラスの林檎」とかもそうですけど半音の進行とかをアカデミックに使っていく、この曲は細野さんの曲だってすぐわかるところも感じています。あとは、上手く言えないんですけど、細野さんの曲になると松本さんの歌詞がストーリーテラー的になるというか。もっと言うと乙女チックにもなるというか、細野さんの作るメロディとコードワークの美しさが、元々ある松本さんの言葉の品格や品性と掛け算になって届いてくるというか。こんなに美しい曲、僕も一生に一度書いてみたいですよ。でも、プロデュースとして関われるだけでも本当に幸せですけどね。



田家:今流れているのは、松本隆トリビュートアルバム『風街に連れてって!』から「ルビーの指環」。歌っているのは、横山剣さんです。1981年の寺尾聰さんの大ヒット曲で、作曲も寺尾さんでありました。この曲はイントロでおやっと思った人も多いでしょうね。

亀田:ハードルの高いカバーでして(笑)。当時のアレンジは井上鑑さんがなさっているんですけど、もはやイントロのフレーズが曲の一部になってるんですよ。これを省くわけにはいかないんですけど、そのままやると音楽の神様に「亀田君それいただきすぎじゃない? 反則!」って言われそうな気がして。僕がこの曲を紐解いていってダンディズムや洗練された都会性みたいなものを感じた中で、ダンディズムという文脈を活かすために今回のイントロを作りました。ヒントは、1977年のビリー・ジョエルの「ザ・ストレンジャー」というアルバムです。ニューヨークの持っている都会の洗練された感じ、そして摩天楼的なダンディーさみたいなものがこの曲と一緒になって歩んでくれるんじゃないかということで、ピアノだけのイントロ、ピアノだけの構想をつけて。なので、僕の中で今回の「ルビーの指環」は「ルビーの指環 meets ザ・ストレンジャー」という構築の仕方をして、両方の楽曲にリスペクトを込めてサウンドデザインしました。

田家:歌を横山剣さんにお願いしたというのも、思いがけない気がしますが。

亀田:ダンディズムというところで言えば、剣さんしかいないかなと。あと僕と剣さんがこれまで共演させていただいた流れもあって、剣さんの歌の旨味成分がどう響いてくるかというのもしっかり見えてました。この曲も迷わず一択で絶対やりたかったの。この曲がヒットしていた1981年の“街鳴り感”、10週連続1位とかそういう様々な伝説を打ち立てた、昭和史に残る名曲だなと思っていて。そのダンディズムを今伝えるには剣さんかなという気持ちでオファーしたら快諾いただきました。

田家:お聴きいただきましょう。アルバム10曲目「ルビーの指環」。

Rolling Stone Japan 編集部

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