ジョン・メイヤーがTOTOに大接近? 「現代三大ギタリスト」の80s路線に迫る

ジョン・メイヤー

ジョン・メイヤーがドン・ウォズとの共同プロデュースによって制作した最新アルバム『Sob Rock』は、メイヤー本人が「自分が聞いて育った80年代音楽へのラヴレターだ」と語るように、80s愛に溢れた作品に仕上がっている。「現代三大ギタリスト」の新境地を、音楽ライターの長谷川町蔵に解説してもらった。

グラミー賞7冠を誇るシンガーソングライターにして天才ギタリスト、ジョン・メイヤーが、メジャーデビューから20周年となるアニバーサリーイヤーに通算8作目となるアルバム『Sob Rock』をリリースした。そんな記念すべきアルバムでありながら本作、ジャケット写真のセンスが謎すぎる。ブラインドから差し込む日光を浴びながら、袖をまくったジャケット姿でギターを抱えてこちらを見つめるメイヤー自体は、様々な美女と浮名を流してきたモテ男のそれ、つまり通常モード。だが色調がモノクロ写真にあとで水色を塗ったかのように不自然なのだ。

実はこうしたデザインは、80年代のロックアルバムによくあったもの。しかもいわゆる名盤ではなく、リリース当時はそこそこ売れたのに、今では忘れられてしまっている作品に多い。こうしたデザインが意図的であることを強調するかのように、各種ストリーミングのジャケット写真にはソニーミュージック系のレコード会社が、リリースしてから一定期間が経過したCDに貼り付ける「The Nice Price(お買い得の意味。アメリカでは発売からしばらくするとCDの値段が下がっていく)」シールが、ニューアルバムでありながら予め貼られている。




年季の入ったロック好きをニヤリとさせるデザインは、アルバムの中身を反映したものでもある。なにしろ冒頭曲「Last Train Home」のシンセフレーズやテンポ感は明らかに、The Nice Priceの売れ筋商品であるTOTOの1982年作『TOTO IV〜聖なる剣』のラストを飾る「アフリカ」にオマージュを捧げたもの。ビートナンバーではあの時代特有のジャストな8ビートが強調される一方で、スローナンバーでは従来のメイヤーの持ち味であるカントリー音楽的要素が抑えられ、深いエコーが音数を絞り込んだバンド演奏を包み込むかのようにこだましている。

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