死の恐怖を乗り越えて学んだこと ハイエイタス・カイヨーテのネイ・パームが激白

ハイエイタス・カイヨーテ(Photo by Tré Koch)


「パーティー」と「涙」
両極端の振れ幅が表す感情

ーアルトゥールの音楽のどんなところに惹かれますか?

ネイ:個人的にはハーモニー。私はそれほど音楽理論に詳しいわけじゃないけど、自分がヴォーカルのハーモニーを重ねようとする時に選びがちなのは、緊張感を生むような音。彼はそういうハーモニーが本当にうまい。聴いていて安らぐのと同時に緊張感があって、その音と音の近さが本当に大好き。私たちの曲を彼がどんなふうにアレンジしてくれるのか、事前にまったく想像できなかったけど、うまくいくという確信はあった。アーティストとしての在り方は全然違うけど、私たちは複雑なハーモニーを大切にするという意味で同志だと思うから。



ー先ほど重要な曲だと話していた「Get Sun」は、どういったプロセスで完成したのでしょう?

ネイ:もともと「Get Sun」は何年も前に私がギターで書いたもので、その時点で基本的に完成していて、それを男性陣に聴かせてアレンジに取り掛かった。そこからバイロンベイっていう、オーストラリアの美しい熱帯雨林にあるスタジオで楽器をトラックごとに録った。そこには5日間くらい滞在したんだけど、都会の雑音から離れて、ただ音楽だけがあるキャンプみたいな感じですごく楽しかったのを覚えてる。そのあとヴォーカルを録る直前に、私が乳がんだと診断されて休まざるを得なくなった。でも、それがすごく深い経験になったような気がする。ようやくヴォーカルを録音しようという段階に、とてつもなく深い感情を抱く出来事が起きて、結果的にそれをパフォーマンスに込めることができたわけだから。

というわけで、自分の人生を変えるメチャクチャ大きい出来事があったあと、場所を変えてレコーディングすることになった。そんな感じだから、今回のアルバムを完成させるまでに何年もかかったし、その間にはいろんな出来事があった。そんな紆余曲折を経て、(最後に)アルトゥールを迎えて「Get Sun」を完成させることができたのは、私にとってご褒美のようなもの。デザートの上に乗ったサクランボみたいな。喜びに満ち溢れた唯一無二のアレンジが加わることで、私たちも改めてこの曲と恋に落ちることができたというわけ。


アルトゥール・ヴェロカイ、2019年のライブ映像

ーアルトゥールと行った共同制作のプロセスについても伺いたいです。

ネイ:リオのかなり綺麗なスタジオで、初めて彼と会った。それまではメールのやり取りだけだったから。私たちがスタジオに到着すると、まずは管楽器の奏者たちがやってきて、それからしばらくして弦楽器のミュージシャンが来たんだけど、その2つのセクションがあまりにも対照的だったのが面白かった。

ホーンの人たちはエネルギッシュで「イエーイ!」っていう、パーティーみたいなノリ(笑)。私たちはどんなアレンジになるのか知らなかったから、ランチ休憩の時にこれ(管楽器が入るだけ)でもう終わりなのかと思ってた。そしたらアルトゥールが「まだあるから待ってなさい」と言って、後からストリングスの人たちが現れた。彼らはさっきの管楽隊とは打って変わって、とてもエモーショナルで真剣で、コントロールルームで演奏を聴きながら泣いちゃうくらい美しかった。管楽隊は「パーティー」で弦楽隊は「涙」、その振り幅が「Get Sun」がもつ感情を表していると思う。

そして、アマゾンに行ったあと帰国してからパンデミックになって、私たちはみんな閉じ込められた。それはつまり、じっくり細部にまでこだわって完璧に仕上げるための時間ができたということでもある。通常だったらツアーをやっていたはずだから、そういう時間が持てたのはある意味ラッキーだったと思う。アーティストにとってスタジオ時間は貴重なものだから。そして、私たちは満足いくものに仕上げることができた。

Translated by Akiko Nakamura

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