BTSを中心に書き換えられる、2020年代のポップ地図

BTS(Photo by Billboard Music Awards 2021 via Getty Images)

音楽メディアThe Sign Magazineが監修し、海外のポップミュージックの「今」を伝える、Rolling Stone Japanの人気連載企画POP RULES THE WORLD。ここにお届けするのは、2021年6月25日発売号の誌面に掲載された、BTSによる大ヒット曲「BUTTER」と彼らを中心に水面下で蠢くポップ産業構造の変化を考察した記事。今の彼らの成功はまだ序章に過ぎず、2020年代のポップカルチャーはBTSを中心に回ることになるのか?

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・一部の隙も無い「Butter」は今年を代表するサマーアンセム

2020年代のグローバルなポップミュージックの世界はBTSを中心に回ることになるかもしれない。彼らの最新曲「Butter」は最早当然の如く全米初登場1位。昨年9月の「Dynamite」を皮切りに、わずか9カ月間で4曲が全米1位奪取というすさまじい勢いだ。

ビートルズが4カ月、シュープリームスが7カ月一週、ジャスティン・ティンバーレイクが7カ月半、ジャクソン5が8カ月半で同様の記録を達成し、それに次ぐのがBTSだと言えばそのすごさがわかるだろう。BTSの全米初登場1位は3曲だが、この記録を凌ぐのはアリアナ・グランデの5曲のみ。今のBTSの勢いならアリアナを抜くのは時間の問題だ。事実として、BTSは世界のトップ中のトップアーティストたちと肩を並べる存在となっている。

そして、「Butter」はそんな彼らの勢いをまざまざと見せつける名曲だ。

BTS (방탄소년단) ’Butter’ Official MV



この曲は、シック「Good Times」やクイーン「Another One Bites The Dust」の系譜を継ぐベースラインが印象的な、80年代風の爽快なディスコファンク。韓国のアーティストはターゲットとする国の市場を踏まえて戦略的に曲調を変える傾向にあるが、「Dynamite」から継続して採用された「Butter」のディスコ路線は、ダフト・パンク「Get Lucky」(2013年)やマーク・ロンソン&ブルーノ・マーズ「Uptown Funk」(2014年)に始まり、ドージャ・キャット「Say So」(2019年、ヒットは2020年)に至るまで、ここ10年の北米メインストリームにおけるスタンダードのひとつ。「Dynamite」よりも80年代色が強調されたのは、昨年に特大ヒットを飛ばしたザ・ウィークエンドやデュア・リパが80年代風だったことを意識したのかもしれない。

Daft Punk - Get Lucky (Official Audio) ft. Pharrell Williams, Nile Rodgers



Doja Cat - Say So (Official Video)



つまり、「Butter」はアメリカでの成功を決定的なものにした「Dynamite」の路線を確信をもって推し進めたと同時に、それからわずか9カ月の間でより現代的にチューンアップしてきたということだ。一部の隙もない。「(「Butter」を)決定的な今年のサマーアンセムと呼ぶには時期尚早。だが、BTSはあまりに高いハードルを設定してしまった」とはNMEの評だが、この見方に異論を唱える者はいないだろう。

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