拘置所で自殺したエプスタイン、「イスラエルのスパイ」説が浮上

プーチン露大統領に「助言」をしている

またホッフェンバーグはエプスタインから、マックスウェル氏とリーズ氏を介して、ホッフェンバーグが言うところの「国家安全保障問題」に関わっていた、と聞かされていた。ホッフェンバーグの話では、「非常に重大で危険なレベルの脅迫、不当干渉、情報取引」が絡んでいたという。

そしてここから話はややこしくなる。

4人の情報筋の話――オフレコではない――によれば、エプスタインは1980年代に武器取引に手を染め、それをきっかけにイスラエルを含む複数の政府の下で仕事をするようになったという。

これら情報筋の中には、かなり信頼できる人物もいる。だが肝心なのは、生前イスラエル政府と他国政府の仲介役だったマックスウェル氏がエプスタインをイスラエル幹部と引き合わせた、という点だ。おそらく彼らは旧ロシアの「工作員」のように、エプスタインを「情報操作作戦」で役立つコマとして利用していたとみられる。

元武器商人から元スパイに至るまで――それにホッフェンバーグも――さまざまな情報筋の考えによれば、倫理的指針を持たないエプスタインはさらに一歩踏み込み、影響力のある人々のきなくさい行動を記録して、彼らを裏切ることにしたようだ。

こうした話を証明することは全くもって不可能だ。ロバート・マクスウェル氏に親しい人々も、ばかげた話と言っている。

だが、腑に落ちない点がある。

ひとつに、エプスタインは2008年、永住を見据えて実際にイスラエルを訪問し、2009年には有罪を受けた州犯罪に対する懲役刑を免れた。彼は帰国の途で、気が変わって報いを受けることにした、とロシア人モデルのキーラ・ディクタイアに告げた(彼はこの時、はるかに重大な連邦捜査を不起訴取引でまんまと逃れたことについては触れていない)。

ひとたび刑務所から出所したエプスタインは生前最後の10年間、ジャーナリストなど様々な人々に、自分は様々な海外要人に助言しているのだ、と豪語した。ウラジーミル・プーチンやムハンマド・ビン・ザーイド、ムハンマド・ビン・サルマーン、アフリカ諸国の独裁者、イスラエル、イギリス政府――そしてもちろんアメリカ人にも。

さらにそのうちの数名には、武器やドラッグ、ダイヤモンドで財を成した、とも語った。

ジャーナリストのエドワード・J・エプスタイン氏には、自分は密売人の天国と呼ばれるアフリカ東部ジブチの遠洋港のオーナーと深い仲で、実質的には自分が仕切ってるようなものだ、と語った。

諜報コミュニティの情報筋によれば、この話はでたらめだ――だが、全くばかげた話とも言い切れない。アフリカと中東を結ぶ仲介者として、彼の名前は確かに挙がっていた。諜報コミュニティ内では、様々な文化圏やネットワークを行き来する「ハイパーフィクサー」として知られていた。

この手の人々はたいてい、自分たちの活動については口を固く閉ざすものだ。

だがエプスタインは黙っていなかった。壁にはMBSことサウジアラビア皇太子やビル・ゲイツや彼のサロンにたむろしたVIP連中の写真を飾っていた。

なので、「彼は諜報界の貴重な財産だった」と証言する情報筋が、「彼は諜報界の負債になってしまった」と言ってもなんら不思議はない――おそらくそれが理由で彼は一切の「保護」を失い、逮捕されてしまったのだ。

Translated by Akiko Kato

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