田中宗一郎×小林祥晴「2021年2ndクォーター総括対談 過去・現在・未来が溶け合う2020年代的光景の到来?」

オリヴィア・ロドリゴ、2021年5月11日撮影(Photo by JMEnternational/JMEnternational for BRIT Awards/Getty Images)



2020年代前半はパンクとロックの時代?

小林:ただ、今のチャートって、すっごく混沌とした印象を受けません? ウィークエンドやデュア・リパみたいな長期政権組が存在しつつ、BTSやオリヴィアやJ・コールの新作が爆発的に売れたと思いきや、70年代ロックのバックカタログがいきなりランクインしたり。パッと見、これが何年のチャートかわからないような。

田中:これが2020年代的な光景なんじゃないかな。歴史が失われたというよりは、過去・現在・未来が溶け合い同時に存在する時代が到来したというか(笑)。当分こういう状態がデフォルトになるかもしれない。

小林:今の状況って、ストリーミングサービスでの視聴習慣やTikTokとかでのヴァイラルマーケティングが完全に浸透した結果なので、当分の間はこれが続きそう。

田中:そんな中、完璧に2020年代の重要プレイヤーの仲間入りしたオリヴィア・ロドリゴの『SOUR』がアメリカでの2021年週間最高売上を記録し、初登場1位。

Olivia Rodrigo – SOUR



小林:シングル「good 4 u」が思いきりポップパンク路線で、まずこれに度肝を抜かれた。「新世代が来たな!」っていう爽快さがありましたね。

Olivia Rodrigo - good 4 u (Official Video)



小林:『SOUR』はポップパンク一辺倒じゃないけど、ロックとポップを並列に聴いてきたのが感じられる内容。ラップがポップになった時代が2010年代だったとすれば、「テイラー・スウィフトとポップパンクなんだ」っていう姿勢が感じられる点がすごくフレッシュ。

田中:ビリー・アイリッシュが2010年代の集大成的な存在だとしたら、オリヴィアはまさに2020年代到来の象徴と言ってもいいと思う。

小林:新世代のアヴリル・ラヴィーンきた!っていう。「good 4 u」の曲自体はパラモアの「Misery Business」に似ているって言われていますけど。

Paramore: Misery Business [OFFICIAL VIDEO]



田中:「good 4 u」ってヴァースがbpm84。そこからコーラスでは168の倍速にテンポチェンジするんだけど、それは2010年代的なbpmから、ゼロ年代前半のロック的なbpmに移るっていうことでもある。

小林:例えばマイ・ケミカル・ロマンスの2006年シングル「Welcome To The Black Parade」はbpm75から195になる曲で。そういうロック的なカタルシスを持ったポップヒットって近年なかったですよね。

My Chemical Romance - Welcome To The Black Parade [Official Music Video]



田中:12歳の子がこのアルバムに夢中になったら、ラップとか聴かなくなっちゃう(笑)。これからの5年、パンクやロックの時代がやってくる可能性の扉を開いたのは、18歳の女の子だったっていう。地道に活動してきたインディバンドたちの立場まったくないよね?

小林:全世界のインディファンの気持ちを逆撫で(笑)。でも、時代の急激な変化というのは、誰もが予想もしなかった場所から誰もが予想もしなかったものが突如現れた結果、引き起こされるのが常ですから。

田中:ビリー・アイリッシュがクラスの端っこで口をきかない不機嫌な女の子だとしたら、これまでの彼女はどこか、どこにでもいそうな目立たない優等生っていうイメージだったわけけど、ロック的なサウンドによってそこを一気に更新したいっていう意識もあったのかな?

小林:あったと思いますね。2ndシングル「deja vu」の時点で、「“悲しいバラードの女の子”というカテゴリーに閉じ込められたくなかった」と発言しているので。

田中:サウンドだけじゃなくて、歌詞の内容も攻撃的。「good 4 u」っていうフレーズは「あんたにとっては好都合だったんだよね?」的なニュアンスだろうし。

小林:この曲のMVは2009年の『ジェニファーズ・ボディ』をはじめ、幾つかのホラー映画からの引用があるらしくて。アグレッシヴな側面を出す意図はいろいろとあったんじゃないかな。

Jennifer’s Body | Official Trailer | 20th Century FOX



田中:MVを撮ったのがフィメール・ゲイズ的な表現を代表格する存在――ペトラ・コリンズだというのももう完全に死角なし。攻撃的とも言える主体性がありながら、きらきらしててガーリー。まさに2021年的(笑)。

小林:タヴィ・ゲヴィンソンがやってたRookieの専任写真家を務めたのをはじめ、グッチやブルガリにも起用され、セレーナ・ゴメスやカーディ・BのMVも撮った人ですからね。

Selena Gomez - Fetish ft. Gucci Mane (Official Music Video)



Cardi B - Bartier Cardi (feat. 21 Savage) [Official Video]



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