絶対に聴き逃したくない「偉大なソング6曲」 2021年4月~6月期リリース編

ビリー・アイリッシュのリアルな表現

5. Billie Eilish / Lost Cause


1stアルバム以降、今現在のメガポップスターという立場からの視点を歌うことが続いていたビリー・アイリッシュがここ2曲、かつての「自らの半径5mの場所のリアリティ」から言葉を紡ぎ出している。トキシックな男性に対する反撃というトピックは決して目新しいものではないものの、いまだ変わらない現実とパンデミック以降の限られた生活という背景からすれば、これこそが彼女にとっての今もっともリアルな表現だということが伝わってくる充実の仕上がり。兄フィニアスによるbpm75のビートも、以前のトラップではなく、グルーヴィなベースラインを配することで新時代の到来を告げている。かつてはメールゲイズに対する防御策としてオーバーサイズのスタイリングだった彼女がこのMVでは女友達たちと部屋着姿でトゥワークを披露。すべてが健康的に攻撃的なのだ。現在の彼女は責任あるロールモデルが陥りがちな陰鬱とした場所にはいない。来るべきアルバムの「前よりずっと幸せなの」というタイトルは新時代に向けての攻撃の狼煙にほかならない。


6. Doja Cat / Kiss Me More feat. SZA


MOOO!――鼻の穴にフライドポテトを突っ込んだ乳牛のコスプレ姿の彼女の動画がミームとしてヴァイラルした2018年にはまさか、ドージャ・キャットが今のようなエスタブリッシュされたポップスターになるとは誰もが思ってもみなかったに違いない。だが2020年初頭、時代のトレンドにあわせ、bpmをぐっと落としたフレンチタッチ/フィルターハウス仕様の「Say So」がパンデミック後の世界であれよあれよという間に市民権を獲得。その後、MTVアワードでのエモロック仕様にリメイクされた「Say So」のパフォーマンスの見事な滑り具合がむしろ安心と懐かしさを感じさせたものの、SZAを客演に迎え、イントロでのギターアルペジオを筆頭に、より90年代スウェーディッシュポップ感を強めたこの4月第二週の新曲では、どこかBTSと並走する、ポストジャンル時代におけるネオオーセンティックスタイルを確立したと言えるかもしれない。3rdアルバム『プラネット・ハー』は6月最終週リリース。かなりバラエティに富んだ仕上がりになるようだ。

Edited by The Sign Magazine

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