絶対に聴き逃したくない「偉大なソング6曲」 2021年4月~6月期リリース編

ラナ・デル・レイ(Photo by Mat Hayward/Getty Images)



豪州のラッパー/シンガーの最新ヒット

3. The Kid LAROI / Without You


全盛期のオアシスを思わせるギターストローク、魅力的なしゃがれた声、誰もが聞き飽きつつもいまだ惹かれてやまない喪失の物語――てっきり90年代半ばのポップロックの雄フーティー・アンド・ザ・ブロウフィッシュのカヴァーも記憶に新しい、ポスト・マローン新曲だと誰もが思い込むに違いない。だが、実際は、故ジュース・ワールドにフックアップされた豪州のラッパー/シンガーの最新ヒット。彼もまた、現在のポストジャンル時代の申し子の代表格だろう。かつてオアシスの曲をギター1本でさも申し訳なさそうに弾き語った故マック・ミラーが思わず苦笑する姿が脳裏に浮かんでくるようだ。時代は変わった。故ジュース・ワールドとの共演曲がメガヒット、ジャスティン・ビーバー最新作にも参加し、この「Without You」はマイリー・サイラスを客演に迎えたリミックスもあってチャートをさらなる追撃中。しかも、どうやら彼と契約したのはコロンビアCEO、ロン・ペリー。間違いなく2020年代前半のトレンドは彼を中心に進んでいるようだ。


4. Lana Del Rey / Text Book


教科書というタイトルは、人生の伴侶を探そうとする女性がそこに「今は亡き父の面影」を投影してしまうことのメタファーだろう。コーラス冒頭は「あなたはサンダーバードに乗っている/私の父と同じ車」。50年代に生まれたフォード・サンダーバードは古き良き時代(?!)の富やアメリカンドリームの象徴。つまり、有害な男性性という言葉がすっかり一般化した2010年代を経た今、にもかかわらず、ここでは「強い父性の喪失」に対する悲しみがほのめかされている。だが、コーラスはこう続く。「さあ、歴史を書き換えましょう/あなたと一緒に踊りきってみせるの」。しかも最後のパートはこうだ。「私たちは群衆の中で『Black Lives Matter!』と叫んだ」。続くカントリー・ソング「Old Man River」の引用は悠久の時を刻む歴史のメタファー。つまり変化は時間を有するということ。ここでの彼女は、愚かで間違ってもいた過去を愛おしむことと、社会の不条理を改善していくことの同居の可能性をほのめかす。誰もが正しくあることに腐心する中、ラナ・デル・レイは現実の複雑さを見つめている。

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