池松壮亮が語る、家族観と社会観 「人間は『社会』を諦めたら生きていけないはず」

Rolling Stone Japan vol.15掲載/Coffee & Cigarettes 29| 池松壮亮(Photo = Mitsuru Nishimura)

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「脚本を読んで、深く共感し、とにかく素晴らしいと思いました。作品のテーマや語り口が新しくユニークで、何か新しいことに挑戦できる映画だなと。韓国での撮影は初めてでしたし、文化やものの考え方が違う人たちと同じ作品を作り上げるのは、非常にチャレンジングでした。言葉が分からない人たちと手を取り合い、緩やかに団結しながら『新しい共同体』を探っていく経験は、映画の中のストーリーともシンクロするものでした。もちろん、お互い理解し合うまでに普段より何倍もの時間がかかります。忖度していてはゴールに辿り着かないので、お互いに言いたいことを言い合って、その上で理解し合い、互いの合致点を見つけていくのは大変な作業です。それでもこうして何とか一つの作品が出来上がったことは、コロナになった今どれだけ貴重な体験であったかを思い知らされています」


©2021 The Asian Angel Film Partners

そう、本作は新型コロナウイルスの感染が世界中に広がっていく中、スタッフたちの努力により奇跡的に無事クランクアップさせることが出来た作品だという。

「ちょうど撮影に入って3日目くらいに、韓国にもコロナが入ってきたというニュースが流れてきました。ソウルでの撮影が終わり、江原道(カンウォンド)へと移動する頃には街の至るところでドローンを飛ばして殺菌をしていました。韓国の方が、危機感は強かったです。SARS、MERSの記憶も新しいですし。『これはヤバい事になるかもしれない』と、みんながざわついていたのを覚えています」

>>【すべての写真を見る】池松壮亮|本誌撮り下ろし写真、舞台挨拶、オフショット写真など

言葉も分からない異国の場所で、コロナの脅威に晒されながらの撮影は想像を絶する辛さだったに違いない。そんな苦境を乗り越えるために、池松が指標にしていたのは一体どんなことだったのだろうか。

「とにかく『諦めない』ことでした。何を諦めないのか?と問われれば、それは映画でもあるし『人』でもあります。もしくは違いを認めた上で『隔たり』を超えていくことかもしれません。映画作りは1人の作業ではないので、共演者ともスタッフとも密に関わり合いながら、ただひたすら邁進した先に見える景色を信じ続けるしかない。それは今回の作品に限らず、映画を作っているときには毎回考えていることです。そうして完成した作品を通してカメラの向こう側にいるお客さんや、映画館で働く人たち、こうやって取材をしていただける関係者の方たちの心に触れることが出来たなら、それが何よりも映画の力を感じ、幸せなこと。強いて挙げれば、それが僕の指標なのかも知れないですね」

さて、前述したように映画『アジアの天使』では新しい家族のあり方が提示される。池松は現在、どのような家族観を持っているのだろうか。
「自分の家庭を持つ経験はまだないですが、憧れはあります。人間は『社会』を諦めたら生きていけないはずです。社会にはいろんな形態があり、その最小単位が『家族』だと思うんです。ただしそれが今、多様化する価値観の中で従来の意味が崩れつつある。個人的には『家族』という言葉や制度やルールに囚われなくても、どんな形であれ人はコミュニティ、社会を形成しながら進化し続けていくと思いますね。この映画の中でも少し触れていますが、これまでの『家族』のカタチに囚われなくてもいい時代が来るはずだし、そうあるべきだとも思っています。ひょっとしたら『家族』という言葉もいずれ消滅するかもしれないけど、たとえ言葉やルールが変わったとしても、大切な人を思う気持ちは変わらないはずだと思っています」




アジアの天使
2021年7月2日(金)より、テアトル新宿ほか全国公開
配給・宣伝:クロックワークス
出演:池松壮亮 チェ・ヒソ オダギリジョー
キム・ミンジェ キム・イェウン 佐藤凌
脚本・監督:石井裕也

7月18日(日)、19日(月)と、テアトル新宿にてトークイベントが開催される。
詳しくは、HPをチェック


池松壮亮
1990年7月9日生まれ。映画『ラスト サムライ』で映画デビューし第30回サターン賞では若手俳優賞にノミネート。2017年『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』、2018年、映画『斬、』、2019年、映画『宮本から君へ』で3年連続で主要な映画賞の主演男優賞を受賞した。待機作に中国映画『1921』、『柳川』、9月17日~放送NHKドラマ「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」などがある。

Hair and Make-up = Fujiu Jim

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