イージー・ライフが語るポップでゆるい音楽性、シュールな世界観の秘密

イージー・ライフ(Courtesy of ユニバーサル ミュージック )

全英2位を記録したイージー・ライフのデビューアルバム『Life’s A Beach』日本盤が7月16日にリリース。ポジティブな空気とメロウな脱力感で人気を集めるUK新世代バンドのフロントパーソン、マレー・マトレーヴァーズが語ったインタビューをお届けする。

英レスター出身の5人組、イージー・ライフはUKの新人登竜門として知られる「SOUND OF 2020」で2位に選出されると、ヒップホップやジャズ、アフロ・ビート、スロウ・グルーヴなど様々なジャンルが融合した独特な世界観を持つサウンドとメロウなヴォーカルが、たちまち世界中で人気を博すように。マレーが書く不眠症や金銭問題、捻じれた人間関係等を題材としたディープな歌詞も彼らの人気の理由の1つとなっている。2018年に発売されたシングル「nightmares」ミュージックビデオのYouTube再生回数は1000万回を突破している。

彼らは2018年に最初のミックステープ『Creature Habits』を発表。昨年1月リリースのEP「Junk Food」は全英7位を記録している。そして今年、ついにデビューアルバム『Life’s A Beach』を発表。「他の場所に行きたいと思う一方で、現在の自分を励まし、人生で得られる小さなことに喜びを見出すこと」がテーマとなっている今作は、どのように作られたのだろうか?



―まずはデビューアルバムにして全英アルバム・チャート初登場2位獲得、おめでとうございます!

マレー:ありがとう。嬉しいよ。それと、ある意味ほっとしている。ようやく出せたことで任務完了した、というか。デビューアルバムというのは、どういうわけかプレッシャーや周りからの期待がとにかく凄くて。この前にも3作のミックス・テープを出してるし、今後もたくさんアルバムを出すわけで。実際、今、既に2作目の制作に取り掛かっているんだけど、プレッシャーなんて全然ない。でもデビュー作となると、本当に大事で、まるで宣誓だ。それをやり終えて、次の作品に進めるのが嬉しい。もちろん、凄く誇りに思っているものができたと思っているし、超満足している。自分たちは本当にラッキーだ。

―アルバムの曲作りはいつ頃から? 以前シングル・リリースされた「nightmares」以外のナンバーはアルバムのために書いたもの? それとも?

マレー:誰が言ったのか忘れたけど、レーベルの人だったかな。その通りだと思ったのは、デビューアルバムというのはそれまでの人生全部を費やして作るけど、2作目以降は1年とかで作る。だからアルバムには昔に書いた曲も入っている。何年も前からあったものだ。例えば「compliments」は、コードとメロディーと歌詞が前から出来上がってて、ピアノで弾き語りができる状態だった。プロダクションやレコーディングに向けたアレンジがまだで、今回時間が充分にあったおかげで、「この曲をアルバムに入れたらいいかもしれないから、本来あるべき姿が何なのかを考えよう」と思って仕上げた。他の古い曲の例でいうと、「living strange」も3年前に兄と書いた古い曲だし、君の言う通り「nightmares」も3年くらい前に書いた曲だ。この3曲以外はだいたいここ18カ月以内に書いた。

―ということは、パンデミックと時期的にもろにバッティングしたのでは?

マレー:レコーディングとプロデュースをした時期はもろに被っているけど、アイディアは前からあったものもある。そもそもアイディアはいつどこで湧いてくるかわからないからね。例えば、ホームシックについて曲を書きたいというアイディアは以前からずっと温めていたけど、書いたのは最近だっていうこともある。でもほとんどの曲が比較的新しい。さっきも言ったように、出来上がると直ぐに出したくなっちゃうから。


『Life’s A Beach』(意味:人生はビーチだ)というタイトルは、「これから雨が降るかもしれないけど、イージー・ライフが太陽のような絶対的な存在になる」という想いが込められたもの。

―パンデミックは曲作り、アルバム作りにおいて物理的・精神的な影響を与えたと言えますか?

マレー:そうだね。というのも、パンデミックは音楽制作のあり方というのを世界規模で瞬時に変えてしまったわけだからね。その分、創作活動という点においては充実した時期になった。苦労した人も多いだろうけど、困難やある程度の制約が課せられることは、むしろ創造力を刺激する。そういう点ではよかった。

制約が課せられることがいいと言っておきながら、自分の場合、前からずっとラップトップを使って音楽を作ってきたし、自分一人で作ることも多かった。だから全く新しいやり方をゼロから学ばなきゃいけなかったわけでもなかったし、レコーディングにしても、スタジオに行かなきゃ何もできないわけではなかった。そもそもスタジオに行くのがあまり好きではなかったし。自分のベッドルームで作業するほうが元々好きだった。だから影響があったとしたら、いい口実ができたくらいだ。新しいマイクを買ったよ。マイクはたくさん持っているけど、凄くいいのを購入して、自分の部屋に置いて、アルバムのヴォーカル・パートは全て自分の部屋で録音した。それはよかった。こういう状況でもなければそうはなってなかったからね。おかげで、レコーディングの技術的な部分を自分でより掘り下げることができて楽しかった。

そういった実務的な面においてはよかったんだけど、何が辛かったかって、家から出られないという状況だ。それは誰もが理解・共感できることだと思う。バンドでアルバムを作ろうとしているのに、実際に集まって演奏できない、会うこともできなかったことで、普段よりも自分の直感に頼るしかなかった。基本は一人で曲を書くんだけど、普段なら、他のメンバーにメールやwhatsapp(メッセンジャー・アプリ)や電話をして、「こんなアイディアがあるんだけど、どう思う?」って聞くことができる。でも、今回は離れているし、集まる機会もないから、何週間も会話を交わさないこともあった。自分一人でどうにかしなきゃいけない場面が多かった。それはそれでいいんだけどね。でも、マイナス面もある。頭が変になりそうだったよ。

確実に言えることは、もし違う状況だったら、全く違うアルバムになっていたね。『Life’s A Beach』というタイトルにもしなかっただろうし、アルバムに入れる曲も違っていただろう。別にロックダウンについての曲ばかりだと言ってるわけじゃない。ロックダウンの経験は誰にとっても、大きな変化を強いられた。だから当然、作る音楽にも影響はあった。


「a message to myself」のテーマは、うつ病とセルフラブ。バンドはこの曲を、プロデューサーであるBEKON(ケンドリック・ラマ―『DAMN』など)と共に制作した。

―本作の曲作りで影響を受けたアーティストや作品があったら教えてください。

マレー:正直、影響を受けたアルバムや音楽がありすぎて……。一つの完成されたアルバムということで言うと、カニエ・ウェストの全ての作品に影響を受けている。作品としての完成度が高いアルバムばかりだ。例えば『ye』にしても短い作品だけど、今でもしょっちゅう聴く。4、5年前に出た作品で、友達がいる前でかけると「なんで今頃聴いてるの?」って言われるんだけど、「そうじゃなくて、少し前に出た作品だけど、今もハマってるからかけさせてよ」って言う。カニエ・ウェストは昔からずっとハマってる。人間的に好き嫌いが別れるアーティストだってのはわかってるけど、セレブとしてのカニエは全然興味がなくて、彼が作る音楽が好きなんだ。

と言いつつ、今回のアルバムが音楽的にカニエ・ウェストに影響を受けているかと聞かれたら違う。アルバムを作る時のアプローチや、作品の中での流れの作り方がうまい人だから、その辺を参考にさせてもらっている。他にも素晴らしいアルバムは本当にたくさんあって。またヒップホップになるけど、ケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』もそう。僕たちのアルバムのサウンドは『To Pimp~』とは全然違うけど、あのアルバムは自分にとって史上最高のアルバムだと思ってる。何が凄いって、本当に前衛的で、アーティスティックで、実験的な作品なのに、ケンドリック・ラマーの人気もあって大ヒットした。自分の思った通りの作品を作ったという部分で、凄く尊敬している。ヒップホップというジャンルの頂点を極めて、次の『DAMN.』はポップ寄りではあったけど、いつだって期待を裏切ることなく素晴らしい。

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