Blue Lab Beats × Kan Sano対談 英日トラックメイカーが音楽観を深く語る

UKとUSそれぞれのサウンド

Kan:僕はロンドンのビートメイカーで言うと、4ヒーローや2000Blackのディーゴの影響を受けているんです。彼のシンセのサウンドの使い方やコードのヴォイシング、コード進行の影響をBLBにも感じるんですけど、それに関してはどうですか?

NK-OK:4ヒーローはあまり知らないけど、2000Blackなら知ってる。僕らがシンセを使うときに主に影響を受けたのはJ・ディラのサウンドだね。彼の音楽におけるモーグのサウンドとか、メロディのフォームに関しては影響を受けたと思う。影響って話だとロバート・グラスパーもそう。あとは2000Blackのカイディ・テイタム。彼らの影響はかなり大きいと思う。エレクトロニックなサウンドの音色やテクスチャーの部分で影響を受けたと思う。



Kan:やっぱりそうなんだ。2000Blackはディーゴとカイディ・テイタムがやってるユニットで、その辺の影響は感じたんですよね。あと、BLBはビートのカラーが明るい気がするんです。UKのビートメイカーはJ・ディラとかアメリカの人たちよりも明るくてクリアなイメージがあって、マーク・ド・クライブロウとかもそうだけど、僕はそういう部分も好きなんです。例えば、マッドリブみたいな粗くてローファイなサウンドもいいなって思うんですけど、自分で作るってなると僕もクリアで明るいものを選ぶんですよね。BLBはそういうことをビートのカラーみたいなものは意識しているんですか?

NK-OK:僕らがUKとUSの違いで感じるのは、UKだとグライムみたいなエレクトロニックなサウンドがあったり、UK独自のジャングルみたいな音楽があったりして、そこにカリビアンの影響があるし、その中でも(カリブの)様々な島の影響があったりして、UKは身近にある音楽が多岐にわたっているのはあると思う。USだとそこはもう少しシンプルかもしれないね。そのシンプルさやある種の単純さが面白いものを生むんだけどね。そういう違いがサウンドやミックスの違いにも繋がっているんじゃないかな。

それとたぶん、USとUKだと使っている色のパレットが違うとも言える気がするんだよね。例えば、僕が影響を受けたUKのジャングルに関して言えば、アップビートでハイエナジーな音楽だから、音色には明るさがある。アメリカの場合はダークでマチュアなサウンドが多いと思うし、サンプリングしてるのもジャズのレコードだったりするし、その中のクレイジーなドラムを使ったりする。そこはダークなトーンで、gritty(ザラッとしててジャリジャリしてる)だったりするよね。

Kan:なるほど、アメリカはブルースなのかな。

NK-OK:ブルースから辿ればジャズやゴスペルに繋がるよね。そのことはスウィングを好んだり、ファンキーなドラムを好むところにも繋がってると思う。だから、サンプリングするって話になれば、キックドラムやスネアドラムの音色に関しても、そういう視点で選ぶだろうから、関係はあると思う。ダークでグリットなサウンドで物語を語るのがアメリカの音楽なのかなとも思うよ。



―BLBの音楽に関しては、どんなところにUKらしさがあると思いますか?

NK-OK:カルチャーのミックスされ方かな。カリビアンやアフリカンの祖先から脈々と受け継がれているものがあって、そこからくるブラックネスみたいなものを表現しているのが自分たちらしさだと思う。実は少し前にガーナに行ったんけど、そこでは音楽だけじゃなくて、精神的な部分でも学んだ部分が多かったんだよね。

Mr DM:帰ってきてからも僕らはリサーチを続けていて、ポリリズムやシンコペーションを学ぼうとしているところなんだ。ガーナは位置的には西アフリカなんだけど、北の地域になると北アフリカにも近い音楽的な要素を持っていたりもしてとてもディープなんだ。今、自分たちはその影響を取り入れながら曲作りの実験をしている。そういうことにも取り組みながら、自分たちのブラックネスみたいなものをセレブレーションしたい気持ちは常にある。

Translated by Kyoko Maruyama

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE