Blue Lab Beats × Kan Sano対談 英日トラックメイカーが音楽観を深く語る

Blue Lab BeatsとKan Sano

UK新世代アーティストが集結し、ブルーノートの楽曲を再構築した企画アルバム『Blue Note Re:imagined』(昨年リリース)から、シングル第5弾として、Blue Lab Beats「Montara」とKan Sano「Think Twice」の両A面7インチが発表された。

Blue Lab BeatsはプロデューサーのNK-OKとマルチ奏者のMr DMによるロンドンのデュオ。2021年にはブルーノートと契約し、初のEP『We Will Rise』をリリース。現在はニューアルバムの制作を進めているところだという。かたやKan Sanoは、デッカ・レコード初となる日本人アーティストとして『Blue Note Re:imagined』に参加。彼が手がけた「Think Twice」のカバーは世界中で大反響を巻き起こした。

7インチのリリースを記念して、この両者の対談が実現。お互いの音楽観やUK独自のサウンド、プロダクションと生演奏の融合について語り合った。聞き手はジャズ評論家の柳樂光隆。


Blue Lab Beats
UKソウル・グループ=D・インフルエンスの総帥、クワメの息子NK OK(写真右)とMr DM(写真左)によるデュオ。過去に発表したアルバム『Xover』と『Voyage』はいずれも高い評価を得ている。2021年にリリースしたEP『We Will Rise』は、人種差別や偏見に疲れた人々に癒しと希望を与えることを目的としたプロジェクト。ブーム・バップとジャズ・ファンクを融合させたサウンドには、ヒップホップの先駆者たちやアフリカン・ディアスポラの音楽から受けた幅広い影響が脈々と流れている。


―まずはお互いの印象から聞かせてもらえますか?

NK-OK:『Blue Note Reimagined』でのKanの曲はすごく好きだったな。

Mr DM:アレンジもすごく良かったよね。

Kan Sano:僕はもともとブルー・ラブ・ビーツ(以下、BLB)は好きだったし、『Blue Note Reimagined』に収録されてる曲もすごく好きでした。僕は毎月プレイリスト“Kan Sano Flava”を作って、リスナーのみんなとシェアしているんですけど、それは僕自身が聴きこむための曲を選んでいて、その中にBLBの曲も入れて聴いてますね。新作『We Will Rise』だとブラクストン・クックと一緒にやってるタイトル曲とかすごい好きで、プレイリストにも入れました。



BLBとKan Sano、『Blue Note Reimagined』提供曲

―BLBのどんなところが好きですか?

Kan:二人は歌ものとインストの曲を両方やっているけど、僕はインストが特に好きなんです。僕も両方作るんですけど、言葉や声の力を知れば知るほど歌の力のすごさを感じて、インストって難しいなって思っちゃう。だから、僕はインストを作るときに歌が入っている曲に負けたくないって意識しながら作ってるんですよね。BLBはインストにも強度があるっていうか、歌ものに負けないくらいキャッチ―さも感じる。そんなふうに感じられるのは珍しいですね。

NK-OK:僕らも若い頃にハンコックとかコルトレーンとか、ジャズを介してインストをたくさん聴いていたからね。

Mr DM:ジョージ・ベンソンもね。

NK-OK:もちろん! それにマイルスもだよね。レジェンドが作るアレンジにはどんな曲でも必ずキャッチ―なフックがある。彼らの曲はすごく自由なんだけど、その中にフックになるような部分を持っているんだよ。

Mr DM:メロディとかね。そういうものが音楽の強度に繋がるから。

NK-OK:僕らはレジェンドたちのそういったところから影響を受けている。だから、インストがいいって言ってもらえることはすごくうれしいことだよ。



Kan:僕もハービーやマイルスを聴いてきたけど、彼らは(音楽的に)いろんなことをやってきた人で、その中から何をキャッチするかってことなんでしょうね。BLBはメロディックな部分をキャッチしてるから、そういうセンスがあるんだろうなって思いました。ハービーはどのアルバムが好きですか?

Mr DM:『Sunlight』に『Thrust』、『Mr Hands』、それから『Head Hunters』かな。

Kan:すごくわかる。

NK-OK:ハービーの本も読んだよ。彼がなぜあんなにチャレンジしてきたのか書いてる本があって、あの本からはすごく刺激を受けた。

Kan:『ハービー・ハンコック自伝 新しいジャズの可能性を追う旅』ですよね、僕も読みました。

NK-OK:ハービーの「自由」に対する考え方を見ると、ひとつのカテゴリーに留まることがない姿勢の理由がわかる。だから僕らも歌ものとインストに関しても隔てなくやるし、スウィング的なジャズもやるし、ビートもやるし、僕ららしくどんどん変わっていく。それはハービーが言っていた「音楽は生きているものだ」って言葉と共鳴していると思うし、それが音楽の美しさの実践だと思っているんだよね。

Translated by Kyoko Maruyama

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