ライブ完全復活、「生の興奮」を取り戻したアメリカの音楽ファン

2021年6月20日、MSG出演のフー・ファイターズに応える最前列のファン(Photo by Griffin Lotz for Rolling Stone)

6月20日、マディソン・スクエア・ガーデンのステージに立ったフー・ファイターズ。最前列に構えるファンは誰もマスクを着けていない。日本ではフェス中止が発表されるなど困難な状況が続いているが、ワクチン接種が進んでいるアメリカでは、夏に向けてライブイベントが復活しつつある。大音響の熱気の中でしか味わえない興奮、これぞまさしく音楽ファンが夢見てきた瞬間だろう。歓喜の声をお届けする。

ライブミュージックが帰ってきた。なんと壮観だろう、見知らぬ人だかりのなかにただ1人――肌で感じられるほどに密着している。わずか数カ月前には、2021年に満員御礼のショウを開くなど、夢のまた夢のように思えた。だが週を重ねるごとに、新たなステージやツアー、フェスティバルが雨後のタケノコのように現れている。みな飢えていた。僕らはもう長いこと待ちわびていた。大音響の熱気の中でしか味わえない興奮がある。他では得られない体験を求めて、熱狂したファンがこうした会場へ詰めかける。音楽ファンなら、過去18カ月間この瞬間を夢見てきたはずだ。そしてついに転換期が訪れ、僕らは音楽ファンであることを改めて噛み締めている。歓喜がついに戻ってきたのだ。

大半の人々はワクチン接種後、社会復帰するのに苦労した。僕も実に1年ぶりにATMを利用し、思わず「ありがとう!」とつぶやいた。ロックダウン中は自分が長身であることを完全に忘れ、今では樹木や戸口に頭をぶつけてばかりだ。歩き方、話し方、髪の梳かし方を改めて思い返し、作り笑いや、たわいないおしゃべり、パンツを履いてヒールを履いて、ナプキンを頼み、バーカウンターで一度に様々なドリンクを注文する――昔はごく当たり前にやっていた、些細な対人コミュニケーションだ。今や僕らはみな『地球に落ちてきた男』のデヴィッド・ボウイになって、この見知らぬ惑星をまごつくエイリアンよろしく、だましだましやっている。

そこには音楽ファンの姿もある。検疫中、僕らは配信ライブを愛するようになった。だが、群衆がノイズと一体化する場に居合わせるという経験は何物にも代えられない。観客が喜びを分かち合い、音楽を胸いっぱいに吸い込むことに勝るものはない。狭い地下室、大規模なアリーナ、ダンスフロア、カラオケバー、安っぽいクラブ、どこも同じだ。様々な感情が渦巻くが、あの独特の歓喜がすべてを可能にする。歓喜なしではショウは始まらない。

Translated by Akiko Kato

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