食品まつりが語るダンス・ミュージックとやすらぎ感、道の駅とアジフライへの愛情

食品まつり a.k.a foodman

 
名古屋在住のプロデューサー、食品まつり a.k.a foodmanがニューアルバム『Yasuragi Land』をリリースする。型破りなエレクトロニック・ミュージックが海外でも絶賛されている彼の新境地とは? 過去にはサウナへの愛情を熱く語った食品まつりに制作背景を明かしてもらった。聞き手は本作の日本盤ライナーノーツを執筆したimdkm。


―『Yasuragi Land』はHyperdubからのリリースです。意外な気もしたんですが、同レーベルのジュークやフットワークのシーンとのつながりを考えるとぴったりとも言える。リリースに至る経緯はどんな感じだったんでしょう。

食品まつり:最初、アルバムをつくっている段階ではリリース先が決まっていない状況でして。ちょうど去年の7月くらいからアルバムの制作をはじめていて、2カ月半くらいでアルバムの7割くらいが完成していました。そこでパッと、Hyperdubに送ってみたらどうかな、と。(レーベル主宰の)Kode9とは3~4年前から交流があって、UKでライブやってたら見に来てくれたり、Hyperdub15周年イベントに誘ってくれたり。アルバムの話をしたら聞いてくれるかもしれない。それで、デモがある程度完成したところで彼に送って、「これはおもしろいじゃん」という話になってリリースが決まりました。

コンセプトは前からあったんですけど、実際の制作はほんとにもう、それこそ3カ月でだいたい完成しました。「Ari Ari」っていうキックの入っていないハウスみたいな曲は4年くらいにできていた曲で、Electribeっていうサンプラーに音だけ入っていて。今回はそれをライブ録音して編集しました。Cafe OTOっていうUKのベニューがやっているTakurokuというレーベルがあって、そこからリリースした「SHIKAKU NO SEKAI」って曲も、ミックスをやり直して収録しています。



―コンセプト自体は前からあたためていたというお話でしたが、いつごろからですか。

食品まつり:音のコンセプト自体は10年以上前からうっすら思っていました。2000年代頭に路上で弾き語りをしていた時期がありまして、友達と弾き語りの途中にセッションになることがあったんです。友達がギターをじゃかじゃか鳴らして、僕が太鼓をぱかぱか叩いて、みたいな。ぜんぜん上手くもないセッションなんですけど、トランス感を個人的に感じて。この感じを打ち込みに変換したら面白いんじゃないかなっていうアイデアがずっとあって。いつかそれをかたちにしたいなと考えていて。それで、今回のアルバムをつくるにあたって、ギターとパーカッションをメインに使ってつくろう、と思ったんです。

道の駅とかフードコート(といった「地方都市」のコンセプト)に関しては、コロナでなかなかライブをやったりライブハウスに行くことが減ってきて。自分が住んでるところは名古屋の外れで、名古屋と隣の市の境目くらいのところなんですけど。そこらへんがなにもない、ザ・地方都市って感じのところで。そこらへんで遊び場所っていうのが近所のイオンのフードコートとかスーパー銭湯とか道の駅に行くくらいしか遊ぶところがなくて。実際にそこで去年感じたこととか、楽しかった気持ちを音にしてみたいな、っていうのもあって。


―本作ではギターがフィーチャーされていることもあってか、メロディックな感じが強いなと思いました。メロディに対するアプローチをどうとったのかお聞きしたいです。

食品まつり:曲をつくる最初の段階で、リズムと上音とメロディのなかで言うと、メロディと上音を最初に打ち込むことが多くて。それを最初につくってからパーカッションとかリズムを入れる、みたいなケースが多いですね。今回は『Yasuragi Land』というタイトルだけに、やすらぎ感が欲しいなと思って、やさしめのメロディにしようかなとなんとなく思っていました。いままでの作品よりは、ほんわかやさしい感じがあると自分でも思います。

―ギターのサウンドはソフト音源を主に使ってらっしゃるんですよね。「Minsyuku」って最後の曲が個人的にお気に入りで何度も聞いているんですが、あのギターはサンプルですか?

食品まつり:あれはサンプルを入れて切り刻んで、いろいろビートにあわせていった感じで。カッティングのサンプルをぱっと入れて、ホーンのサンプルも入れて鳴らしたり。パーカッションもサンプルを切り刻んで配置しています。

ラストの曲ということで、切ない気持ちになる曲にしたいなと思ったんです。フードコートなんかいろいろ行って、最後に民宿に泊まるみたいな、アルバムのなかに流れがあって。楽しいんだけどこの旅が終わってしまう、そんなイメージでつくりました。

―アルバム全体である種のストーリーがあるんですね。

食品まつり:なんとなく、ふんわりと。そのために、コミカルでやさしい感じの曲もありつつ、シリアスなものもあいだに入れていきました。

 
 
 
 

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