R&Bの名盤、メアリー・J・ブライジの2ndアルバムに隠された物語

「人生を選ぶか、死を選ぶか」

7. 『マイ・ライフ』収録中、自殺願望を抱えていた

はた目にはブライジは成功者に見えた――大手レーベルと契約を結び、デビュー曲はダブルプラチナムを記録、2ndアルバムも目前だった。だが彼女の悩みは積もり積もって、2枚目のアルバム収録中には自殺を考えるところまで行っていたという。「酔いつぶれて死ぬとか、限界までドラッグをやるとか、何でもやった」と彼女は振り返る。「私はいつもふさぎ込んでいて、生きているのが嫌になった」。それゆえ彼女は、『マイ・ライフ』を「おそらく私の中で一番暗いアルバム」ととらえている。「あの後も暗い出来事は山ほどあったけど」と彼女は続ける。「でもあれがターニングポイントだった。生きるか死ぬかの決断に迫られた時期だった」

ドキュメンタリーではブライジのファン数名が登場し、彼女おかげで人生の辛い局面を乗り越えることができた、と語っているが、彼女自身はファンとの関係を真逆にとらえている。本人いわく、ファンのおかげで「つらい思いをしているのは自分だけじゃないんだ、と思い出させてくれたのよ」


8. スピリチュアルな経験が、ブライジに自殺を思いとどまらせた

「この世界から完全にいなくなる」のを思いとどまった瞬間を、ブライジは今も覚えている。「私はリビングルームに座っていた。夜通しずっと起きていた」と振り返る。「開いた窓から、雲がぞくぞく入り込んでくるような感じだった。私はすっかりハイになっていた。心臓がバクバク鳴り始めた。その日は日曜の朝だったんだけど、日曜の朝はいつも不思議な気分になるのよ。自分のやっていることが、神様にはすべてお見通しのような気分になるの。それで思ったわ、『自分はこんなこと望んでない、こんなのおしまいにしなくちゃ』って。人生を選ぶか、死を選ぶか。私は人生を選んだの」



from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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