トーキング・ヘッズのティナ・ウェイマスが名人たる所以、鳥居真道が徹底考察

そして、『Talking Heads’77』を聴き返して感嘆したのは、それはティナ・ウェイマスの素晴らしさに他なりません。バンドのデビュー作であるにも関わらず、いきなり名人のような演奏しているのでびっくりします。



ティナのベースのどこが素晴らしいのか。伸ばすところはしっかり伸ばす。止めるところはしっかり止める。そうした音価コントロールの確かさです。ちんまりしていながらも、躍動感があるのはそのためだと思われます。メリハリが利いているのです。ティナの演奏には、小中の9年間に渡って週に二回、書道教室に通っていた人が書く字のような美しさがあります。そんなもんロックじゃねえよと見る向きもあるでしょうが、デヴィッド・バーンが、ラコステのポロシャツをタイトめに着るような非ロック的なセンスには、とてもマッチした演奏技術だといえます。

「Don’t Worry About the Government」はコード進行がヘンテコな曲です。定石ではマイナーコードを使う箇所でメジャーコードを使ったりして、ポップではあるけれど、少し不思議な雰囲気が漂っています。ティナは極力シンプルに徹しつつも、メロディックなフレージングを繰り出して、トーキング・ヘッズ特有のポップネスに寄与しています。フレーズの一貫性も素晴らしい。この曲のベースラインは基本的に、低い、高いの繰り返しでフレーズ全体を構成されています。ミニマリストの真価が発揮されているといって良いでしょう。メロディの動きを縦、リズムの動きを横とするのなら、ティナは縦と横のバランスが非常に良いベーシストです。ジェームス・ジェマーソンやポール・マッカートニー、細野晴臣もそうしたタイプだと言って差し支えないでしょう。特にメリハリの付け方に関してティナとポールと共通する部分があるように思います。

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