トーキング・ヘッズのティナ・ウェイマスが名人たる所以、鳥居真道が徹底考察

『アメリカン・ユートピア』はデヴィッド・バーンのキャリアを総括するものとしても素晴らしい内容だったと思います。ここで取り上げられていたトーキング・ヘッズの曲は、この作品によって新たな色彩を与えられたように思います。バーンのソロは熱心に聴いてきたわけではないので、家に帰ってから何枚か聴いたりもしました。セイント・ヴィンセントと共演したアルバム『Love This Giant』はリリース当時に良く聴いものだよなぁなんてことを思ったりもしました。

ステージ上で人が動き回る様子を眺めるのもシンプルに気持ちが良かった。「ダンス・ミュージックは音そのものが踊っていなくてはならない」というのが私の持論です。音が踊る様を認識するためには、運動と音とが結びつくことが最初の一歩です。そういう意味で、『アメリカン・ユートピア』も『ストップ・メイキング・センス』も素晴らしい作品であるのは間違いありません。音源を聴いているだけでも、パフォーマーたちの運動が想起されるからです。



映画を観てから数日の間、「Don’t Worry About the Government」がイヤーワーム状態になりました。イヤーワームになったが最後、音源を聴かずにはいられないので、1stアルバム『Talking Heads’77』をリピートしていました。かねてからの愛聴盤で、トーキング・ヘッズのアルバムのうち、もっとも好きなのはこの第一作と言っても過言ではありません。お気に入りの点としては、まず慎ましやかなアレンジ。とてもちんまりしていて、小動物的なかわいらしさがあります。他には、ロックにおいてオーセンティックな楽器を用いて今もなおフレッシュに聴こえるフレージングも挙げられます。「Don’t Worry About the Government」のイントロのフレーズは、古風なマンドリンっぽくも聴こえるし、シンセの自動演奏的な質感もあって、とても不思議です。特に謎なのが右チャンネルから聴こえる減衰の短いアコギっぽい音の何か。バンジョーに似ているようで少し違う。何かでミュートしているのでしょうか。シンセサイザーで作った音のような質感があります。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE