安部勇磨が初のソロアルバムを語る 「無駄な音を排除しない」曲作りとは

全てのノイズを消さない

─でも、今回聴いてちょっと思ったのはヨ・ラ・テンゴの作品なんですよ。特に90年代の彼らの作品って録音自体は割とラフだけど、マスタリングは敏腕ベテランのグレッグ・カルビにいつもやってもらっている。もちろんミックスをちゃんとしているのが前提だけど、録音以上にミックスやマスタリングがこういうラフな作品の場合は特に重要だなと感じますね。

安部:ああ、わかります~! ヨ・ラ・テンゴって確かにそうですよね。すごいラフなのにちゃんと聴けますよね。あれって生の空気が入っている“イイ”なんですよね~。ヨ・ラ・テンゴって意味のあるノイズを作品の中に残してるじゃないですか。ノイズ・キャンセルってありますけど、僕、全てのノイズを消しちゃうのってどうかと思うんですよ。ノイズがあるから面白いし人間らしさが出るのになって。知り合いにスピーカーとかを作ってるおじさんがいるんですけど、その人がいつも“世界に無音の状況ってありえない”って言うんですよ。なのに人間は音楽を作る時に無駄なノイズを消したがるわけで。無駄な音ってないよなあって本当に思いますよ。

─無駄のある音がいいというのは、意味なんかなくてもいい、という概念とある意味同じですよね。

安部:そうですよね! だから、ずっと曲を作ることばかりを先行して考えていたんですけど、音のことも一生研究し続けないとダメだなって思いますね。細野さんの作品が長くずっと聞けるのって、曲はいいだけじゃなくて、古臭くならない音の在り方に秘密があるんじゃないかって。そういうのをひっくるめて、ソングライティングなんだみたいな。ようやく今、そこに気づき始めています。

Edited by Haruka Iwasawa

<INFORMATION>


『Fantasia』
安部勇磨
Thaian Records
発売中

01. ファンタジア
02. おまえも
03. おかしなことばかり
04. 素敵な文化
05. さわってみたら
06. 風まかせ
07. テレビジョン
08. ありがとさん
09. さよなら
10. ピンと来たほうへ
11. 意味なんかなくても
12. おたより

Fantasia
Thaian Records




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