安部勇磨が初のソロアルバムを語る 「無駄な音を排除しない」曲作りとは

「ただいい加減なだけ」とは違う“ブートレグ”の感覚

─20年くらい前、デヴェンドラ・バンハートらが登場した頃、ティラノサウルス・レックスとかインクレディブル・ストリング・バンドとかが一巡り、二巡りしてまた再評価されたりもしましたが、ただ、再評価の波が来るたびに少しずつ定義が塗り替えられている気がしますね。今、安部くんがそこを掘り下げた時に、どういう新たな観点が加わったと思いますか?

安部:ティラノサウルス・レックス、まさにこのアルバム作っていた頃聴いてたんですよ。その人じゃないとヘンになっちゃうような、すごい音、みたいな。で、思ったんですけど、俺、ブートレグの感覚がすごく好きなんですよ。こんなこと言うとアレですけど、違法で作られたモノ……メキシコで作られたすごい適当なゴジラのオモチャみたいな(笑)。正規にはない、適度に手を抜いたあの感じがすごい好きで。言ってみれば、そういう気楽さみたいな、ユーモアみたいなものをティラノサウルス・レックスとかに感じるんですよね。もちろん、紛い品とかブートではないんです。でも、あの感覚にすごい近いのかなって。こないだ細野さんが“その国のモノを手のひらに乗せて見てるみたいな感じがエキゾチック”だって話されていて、なるほどなって思ったんです。その距離感ですよね。それが好きなんだなって。

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─ある種のB級感。

安部:そうですそうです。なんちゃって感。本国の本気の人……ももちろん素晴らしいんですけど、なんちゃって感みたいな人の方が案外楽しかったり、本気の人より面白がれたりするんですよね。マック・デマルコもそうだけど、クルアンビンとかコナン・モカシンもそうじゃないですか。

─それはある種の“誤解”や“想像”から生まれているんですよね。でも、決して滑っていない。マック・デマルコは本当に勉強熱心ですよね。

安部:ですよね! スレスレのところでちゃんと音がいいとか、曲がいいとか、ただいい加減に適当なだけじゃない。でも、ヘンなことをやってる。パン振りまくってヘンなことをやってるんだけど、ちゃんとしてる部分がある、みたいな。そういうの本当にいいですよね。だから、僕も、自分のやっていることに、もっとこれからは日本人の何か、みたいなものを入れていけたらいいなと思っています。日本なのかアジアなのか……そういう雑多なイメージのエッセンスをうまく自分なりに消化できたらいいなと。これはもう次のソロの話になるんですけど(笑)。というのも、今回のソロを作っているときは、まだそこまで考え切れていなくて。録音や音処理ももう全然考えてなくて、ただただ夢中に作っていただけなんで。

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