元乃木坂46・中元日芽香と手島将彦が語る、メンタルヘルスを含めたアイドル論

ー中元さんは実際に心理カウンセラーとして仕事を始められて、元アイドルという経験が役に立つことはありますか?

中元:アイドルを否定するわけではもちろんありませんが、心理カウンセラーとアイドルのイメージを並べた時に「世間知らずなんじゃないのかな」とか、「ちやほやされて人の悩みや痛みとは縁遠いところにいるんじゃないかな」が先行するのではないかと不安でした。私も仕事を始める前はビジネスネームをつけて、顔も伏せようかなと思っていたぐらい、アイドルとカウンセラーを結びつけるって果たしてどうなんだろう? と悩んでいました。実際にカウンセリングの仕事を始めると、依頼者の方が誰に依頼しようかなと思った時に、「なんとなく顔や声が分かっている人だと、人見知りの自分でも多少緊張せずに話せるかな」と思ってお話していただいたりもして。私自身、カウンセラーの経験はまだ浅いのですが、カウンセリングを受ける最初の一歩として、とっつきやすいのかなと思いました。依頼者の方と話をしていても、「組織の中でのポジション、私も悩んだことあるな」とか、「容姿のコンプレックスあるな」とか、いろいろなことにおいて実体験を持って共感することができて。もちろん、実体験を持って共感する必要はカウンセラーにはないと思うんですけど、いろいろな悩みにおいて「私はこうだったかな」と当てはめて話が聞けるという面で、アイドルという経歴には助けられています。

手島:僕も音楽をやっていた時、良くも悪くも普通じゃないコースを通ったことって今思うとよかったなと思っていて。今は勤め人として働いているのですが、一旦違うコースに行くことによって見えてくるものが結構ありますね。あと、芸能事、芸術事では、理屈ではなく何かをキャッチするというところがあると思いますが、それは時に何かの危険だったり大切なことだったりを、先に察知するということでもあります。一旦普通から外れたからこそ気づけたことや、10年経って、20年経ったいま自分の人生が作られたって思うんですよね。

中元:セッションをしていて、立派な会社にいるけど、フリーランスになりたい、でも怖いというお話を聞くことがあって。私は早いうちに自由な方に行っちゃったから、転職に対するハードルがあまり高くないというか、「やりたいことをやった方がいいよ」と思ったりするんです。簡単にそんなことも言えないので、もちろんその方の状況や感情を訊くようにはしています。ただ、親戚のみなさんだったら反対するだろうなという選択について、柔軟に肯定的に話を聞くことができますよね。

手島:それは本当に思いますね。僕も高校生から進路相談を受けることがあるんですけど、「戦略的に考えてどの選択がいいですか?」みたいな質問って結構あるんです。いい意味で賢い人はそういうことを考えるんだけども、「結果的に好きなことを選んだ方が、実は戦略的にもいいんだよ」って話をするんですよね。学校やグループでも、みんなそれぞれ好きだったり得意だったりすることがあって、ジャンルが違うにしろ、同じくらいの熱量で好きな者同士だとより高まり合っていく。ところが、その熱いところに「実はそんなに好きじゃないけど、戦略的に選びました」って来ても、たぶん合わないし、同じように高まり合うことはないですよね。仕事でも戦略って大事ですけど、長期的に見たら、むしろ好きなことをやる方が戦略的かもしれない。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE