拷問以上の地獄 米刑務所で大問題になった「恐怖の独房」

1996年、米テキサス州ハンツビルにある老人受刑囚専用棟エステル棟にて。危険人物とみなされ、独房に収監された受刑囚(Photo by Ed Kashi/VII/Redux)



「誰も見ていないところで、奴らは憎悪行為を行っている」

囚人たちの話は驚くほど一貫している。みな幻覚や妄想、自殺願望など、隔離が原因の重度の精神疾患を経験している。ある囚人は、狭い部屋で長いこと宙を見つめ続けたために視力を失ったと報告している。ウィリアムズ氏の話では、別の囚人は大声で電話していた。普通のトーンでの話し方を忘れてしまったのだ。

隔離されているものは「極悪中の極悪人」――他から引き離しておかなければ大惨事を引き起こすハンニバル・レクターではない、とウィリアムズ氏は指摘する。囚人たちは理由などお構いなく、時には理由すらなく独房にぶち込まれる。完全に看守の気まぐれだ、と彼女は主張する。「ある男性は、水の入ったグラスを落としたせいで隔離棟に送られました」(ミシガン州矯正局の広報担当者ゴーツ氏は、看守が正式な手続きや正当な理由なしで囚人を独房に入れることはない、と否定した)。

さらにウィリアムズ氏は、多くの施設が地方に置かれている点を指摘する。町の住人はほぼ白人だけ、場合によっては刑務所が主要産業だったりする。「黒人を完全に隔絶された場所へ連れて行くんです。黒人の囚人で生きながらえている町に」

「北に行けば行くほど……50年代60年代の南部のようになってくる」とは、アンドラウス・マクラウド受刑囚の手紙の一節。「ミシガン州矯正局のユニフォームを着たKKKだ」と、アンソニー・リチャードソン受刑囚も書いている。「誰も見ていないところで、奴らは憎悪行為を行っている」


Jody Hill/Silenced.in

2019年2月、不動産業者のダニエル・ダンさんは38歳の弟のジョナサン・ランカスター受刑囚と面会したが、弟は終始小声で話していた。「弟の声は以前と違っていました。明らかに精神疾患を患っていました」と、彼女はローリングストーン誌に語った。ランカスターは他の囚人と諍いを起こしたため独房に入れられ、徐々に妄想に陥っていった。「独房にガスが送り込まれているとか、食事に毒が入れられているとか言っていました。私は『大丈夫? ちょっとおかしな口ぶりだけど』と言いいました」 ランカスターは黙ったままだったという。「すると弟はまた小声で、『やつらに殺される』と言ったんです」

ランカスターの体重が落ち、常軌を逸した行動を続けても――姉いわく、彼は頭語失調症をはじめ様々な精神疾患を患っていた――刑務所職員はランカスターに適切な治療を受けさせなかった、と姉は主張している。彼は幻覚を見たり、胎児の姿勢でうずくまったりするようになり、水も食事も拒んだ。デトロイトフリープレス紙の報道によれば、彼は3週間で体重が26%(51ポンド)も減少した、と訴状には書かれている。

「職員ですら、弟が独房に入れられた理由が分かっていませんでした」とダンさん。彼女は弟に適切な治療を行うよう職員に懇願したが、「身体上は問題ない」と言われたという。2019年3月8日、彼はペッパースプレーをかけられて観察室に入れられたが、訴状によれば水は与えられなかった。3月11日、病院での診察が認められた。その日の朝、彼は拘束椅子に縛り付けられた状態で独房に置き去りにされた。12時50分、身動きしていないのがわかり、のちに死亡が宣告された(ランカスターの遺族は過失致死でミシガン州矯正局職員を訴えている。ゴーツ氏は係争中の件についてコメントを控えた)。

Translated by Akiko Kato

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