拷問以上の地獄 米刑務所で大問題になった「恐怖の独房」

1996年、米テキサス州ハンツビルにある老人受刑囚専用棟エステル棟にて。危険人物とみなされ、独房に収監された受刑囚(Photo by Ed Kashi/VII/Redux)



ミシガン州で1日20時間以上隔離された州立刑務所の囚人は3200人

独房が心身に及ぼす影響は、2世紀前からはっきりしている。1892年、ペンシルベニア州のクエーカー教徒は初の独房専用刑務所を開設した。囚人に内省を促すことが期待されたが、それどころか精神を病んだり、自殺を図る囚人が多く出た。13年後、チャールズ・ディケンズは初めてアメリカを訪問。実際に刑務所を目の当たりにし、独房の実態に衝撃を受け、「生きたまま埋められたも同然だ」と表現した。

それから1世紀半、数々の国際協定が隔離は非人道的だと明文化している。2011年には拷問に関する国連特別報告者を務めるフアン・メンデス氏――彼自身も1970年代にアルゼンチンの軍独裁政権により投獄され、1年以上拷問を受けた――が、15日以上の隔離は拷問に該当すると宣言した。

「独房への収監は耐え難いものであることは知られている。隔離のような精神的ストレス要因は、まさしく身体的拷問と同じ臨床的苦悩を生みかねない」。これはジェフリー・L・メッツナーとジェイミー・フェルネリンが米国精神医学アカデミー・ジャーナルに発表した、懲罰的隔離措置への医師の関与に対する医学倫理についての論文の一節だ。

Citizens for Prison Reformの報告書によれば、ミシガン州で1日20時間以上隔離された州立刑務所の囚人は3200人にのぼる。リチャード・ゴダールは47年間隔離されている。ジェイムズ・ミラーは約36年間、ダニエル・ヘンリーは12年間、他の囚人から隔離された。クラレンス・ヘンダロンは67歳の時に独房に入れられたが、以来重度の関節痛で車いす生活を送っている。伝え聞くところでは、数カ月も外に出してもらえていないらしい。「単なる拷問だ」と言うのはマリオ・リー受刑囚、通称アケシ。2005年から収監され、現在はイオニア矯正施設で服役中だ。

ミシガン州矯正局のクリス・ゴーツ広報担当者は、矯正局が定期的に囚人を何年も独房に収監していることを否定した(WEBサイトSilencedに掲載された個々の囚人の所在についてコメントを求めたところ、ミシガン州情報開示室に転送された。返答があり次第、追って報告する)。「今年2月の段階で、(管理隔離のもとにおかれていたのは)1名でした。3万2000人の中でたった1人ですよ」とゴーツ氏。だが、全米で展開するUnlock the Box運動の活動戦略担当者ジェシカ・サンドヴァル氏いわく、ミシガン州矯正局は様々な専門用語で隔離を分類して、実際の人数をごまかしていると言う。例えば精神疾患棟、観察棟、一時隔離棟、そして代替隔離、通称STARTプログラムだ。

最近STARTプログラムに移されたアケシは、分類は無意味だと言う。「このプログラムは一般囚人向けに分類されているが、実際は管理(隔離)だ。唯一の違いは、週に1回1時間のグループセラピーに参加しなくちゃいけないってだけさ」と彼は言う。「その一方で、独房との共通点は山のようにある。屋外でのレクリエーションは週5日、1時間だけ。あとはコンクリートの床と金網の檻に囲まれた独房にぶち込まれる」。彼の話では、宗教的集会も含む団体活動には一切参加が認められていない。「1日23時間、あるいは24時間、ずっと独房の中。どう考えても矯正局が言うような一般囚人プログラムじゃないし、ましてや隔離に代わる代替措置でもない」

「社会が(つまり人間が)人間に対して与えられ得るもっとも重い罰は、俺たちを追放して生きたまま墓に入れること――さもなくば、社会から完全に孤立させて感覚を奪うこと」。 2020年、アケシはミシガン州イオニア郡のイオニア矯正施設からこのような手紙を書いた。「精神的にも身体的にも、終わりのない拷問だ」

「専門用語でシステムを外から見えにくくしているんです。こうした婉曲的な表現は、どれも実質的には独房です」とサンドヴァル氏。睡眠時間よりも長く囚人を強制隔離した場合、すべて独房と定義されるべきだ、と彼女は言う(この件に関してゴーツ氏は知らないとローリングストーン誌に答え、矯正局の情報開示室に問い合わせを転送した)。ミシガン州矯正局の統計では、管理隔離または長期隔離に置かれている囚人は835人、短期の罰として懲罰的隔離に置かれているのは130人。人種の内訳は明白、長期隔離に置かれた囚人の70%が黒人だ。

Translated by Akiko Kato

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