フライング・ロータスが『YASUKE』を語る 黒人がアニメを愛し、音楽を手がける意味

フライング・ロータス(Courtesy of Beatink)

カルチャーと伝統のために

―『YASUKE』の舞台は日本の戦国時代ということで、音楽に関しても日本的な要素をかなり意識していたと思います。ただ、普通の“日本”ではなくて、『YASUKE』の中の日本を音楽で表現していたのが面白かったです。

フライロー:日本的なサウンドを作りたいとは思ったけど、日本の音楽のパロディになるのは嫌だった。日本の音楽の安っぽい(Cheesy)バージョンになってしまわないように気をつけたつもりだ。方向としては日本的なものを目指しつつ、日本の音楽を重んじる気持ちは大事にしていた。例えば、日本のドラムやパーカッションに関して、俺は詳しくはなかったから「試しに一度やらせていただけますか?」って感じの(謙虚な)スタンスだったね。

―あなたの叔父・叔母であるジョン・コルトレーンとアリス・コルトレーンも日本の琴や尺八(バンブー・フルート)に関心を持っていたんですよね。彼らの血を引くあなたが、ここにきて日本の伝統的な音楽にインスパイアされた音楽を作るのは運命的だなって思いました

フライロー:ははは、確かにそうだ。彼らは日本の楽器に興味を持っていたね。日本の太鼓や琴や三味線はとても特殊な楽器で、それぞれに個性がある。一度聴いたら、あの楽器だってみんなわかるようになるよね。そして、その楽器のルーツが日本だなってこともわかる。でも、ただそういった楽器を使いさえすれば日本の音楽になるって感じのことはやりたくなかったんだ。そういった楽器をただのお飾りとして使うことはしたくないよね。その部分は今回の難しさだった。


尺八を演奏するジョン・コルトレーン。シャバカ・ハッチングスのInstagramより

―『YASUKE』でもう一つ印象的だったのは、「奴隷はずっと奴隷のままだ」(Servants will always be sevants.)という言葉が何度も出てくるところです。劇中では黒人で外国人の弥助、もしくは女性の夏丸に対して言われていますが、おそらく蘭丸にも関係があることだと思います。それに、この時代の日本は身分制度があったので、実は武士以外のほとんどすべての登場人物に当てはまる言葉でもある。いろんな文脈を考えさせられる言葉です。

フライロー:そのフレーズを聞いて、アメリカにおける黒人の奴隷をも思い浮かべる人が多いだろうね。俺もあのセリフが度々登場する中で、舞台は日本だけどアメリカの奴隷のことを思い浮かべてしまう。あるいは階級制度のことを思ったりもした。ああいう快く思えない台詞が出てくることによって、日本とか、アメリカとか、その地域や時代だけに限定されない感情を俺も感じたよ。

―『YASUKE』の中で重要な言葉として“誉れ”(honor)があると思います。これは侍の言葉ですが、『YASUKE』の劇中でも様々な意味が含まれているように感じました。あなたはこの”誉れ”をどんな意味だと解釈しましたか?

フライロー:この感覚は、侍を経験して弥助が学んだ一番大きなものだったと思う。『YASUKE』に関わった自分の感覚としては、“作品のために貢献しようとする”とか、“作品にためにベストを尽くす”とか、そういう“自分の手柄じゃなくて、そのストーリーのために仕事をする”ってことに通じるものだと思ってる。それは、自分が個人としてやってきたことや、個人的にやりたいことだけじゃなくて、カルチャーとか伝統のために何かをやること、にも通じるんじゃないかな。

―心の中に“誉れ”を持つ、黒人の侍としての弥助を表現できたと思う曲は?

フライロー:スコアの方には、そういうことが表れている部分が多いと思う。特にシンセサイザーでのソロのサウンド、その荘厳な音色だね。第1話での弥助と一華と咲希が船に乗って移動しているシーンでの音楽が俺はすごく気に入っているんだ。すごく美しい音楽なんだけど、悲しみを湛えたような感覚があるし、水の上を移動している浮遊感も感じさせる。それに、そこでの正直で嘘のない感情が表れているような気がするんだ。そこの部分は弥助にとっての“誉れ”みたいなものを音楽でうまく表現できているんじゃないかと思っている。



―最後に、ブレインフィーダーのレーベル・オーナーとして、ハイエイタス・カイヨーテとの契約について一言いただけますか。

フライロー:ハイエイタス・カイヨーテは素晴らしいミュージシャンだし、すでに素晴らしいアルバムを残しているよね。彼らの作品はいわゆるフューチャークラシックスとして名を連ねることになるのは間違いない。個性的で新しい音楽を作っているから、俺は彼らの音楽が大好きだったんだ。それに彼らも、ブレインフィーダーのファミリーに対して愛情を示してくれている。だから、同じ傘の下にいる仲間って感じ。契約することに何の問題もなかったよ。

※6月25日発売の「Rolling Stone Japan vol.15」に、ハイエイタス・カイヨーテのネイ・パーム取材記事を掲載。聞き手は柳樂光隆。






フライング・ロータス
『Yasuke』
発売中
日本盤ボーナストラック収録
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11850

Netflixオリジナルアニメシリーズ
『YASUKE -弥助-』
Netflixにて全世界独占配信 (全6話)
作品ページ: https://www.netflix.com/title/80990863


Translated by Kazumi Someya

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