甲斐バンドの70年代・80年代 新しい時代を切り開いた軌跡

甲斐バンドのデビュー45周年のライブベストアルバム『サーカス&サーカス2019』




1977年のアルバム『この夜にさよなら』の中から「氷のくちびる」をお聴きいただきました。劇的な曲ですね。こんな風に曲が展開していくというインパクトがある曲は、ロックバンドの曲の中にも歌謡曲の中にもあまりなかったな、というのが当時の印象でした。アルバム『この夜にさよなら』は、過渡的な作品だと思ってるんですね。東京と福岡というテーマが歌われる最後のアルバムでもあるんでしょうし、フォークロック的な曲調もここから変わっていくという1枚です。この1977年、1978年というのは、バンドだけでなく甲斐さん自身の経験というのも大きかったなと思います。1977年3月にはじめてニューヨークに行くんです。彼は、ハドソン川が凍りついていたという話をよくしてましたね。厳寒のニューヨーク。その後の10月に『この夜にさよなら』が出ている。そのあと1978年1月に、ナッシュビルに行ってソロのカバーアルバム『翼あるもの』を作ります。ザ・ピーナッツ、ザ・キング・トーンズ、ザ・ジャガーズ、かまやつひろしさんとか浜田省吾さん、THE MODSの森山達也さんのアマチュア時代の曲も入ったりしています、早川義夫さんの「サルビアの花」とかかなりマニアックなカバーアルバムなんですね。

このアルバムを改めて聴いて思ったのが、ザ・フォーク・クルセダーズの「ユエの流れ」がカバーされてるんですね。毎回言っていますが、自分も含めて当時の音楽ライターの力不足。甲斐さんがなぜこの曲を取り上げたのか? と指摘した人がいたかなと。この曲はザ・フォーク・クルセダーズの解散コンサートでも歌われた曲なんですが、元々ベトナムで歌われていた曲で、第二次世界大戦が終わって、日本に帰れなかった日本の兵隊さんに向けて、ベトナムの民謡に日本語の歌詞をつけたという歌です。1968年というのはベトナム戦争の真っ最中ですが、加藤和彦さんはこの曲を反戦歌というニュアンスで取り上げたと思うのですが、当時はそういう議論はほとんどされなかったんじゃないでしょうか。

このアルバム『翼あるもの』は、甲斐さんが聴いてきた日本のフォークロックへのオマージュと大袈裟に言えば総括にしようとしたアルバムなのかなと思うと、この作品で彼が何にさよならしたのかを考えたくなる流れでもあります。そういう転機と言うと、1978年3月に出た、中野サンプラザでの公演を収録した初のライブアルバム『サーカス&サーカス』もありますね。やっぱりここから次の扉を開けて、1978年10月のアルバム『誘惑』につながります。その中からお聴きください、「カーテン」。

Rolling Stone Japan 編集部

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