細美武士とTOSHI-LOWが語る、the LOW-ATUSが体現するフォークの世界

お互いのラブソングが普遍性を帯びるまで

―細美さんが言っていた“語り部的な立ち位置”って言葉がすごく腑に落ちました。こういう実話ベースの歌って、下手するとストーリーの押し付けになりがちじゃないですか。けど細美さんの歌声が透明で何にも寄ってない感じだったから、聴いていて想像力がどんどん掻き立てられて、自分の愛しい家族が亡くなったらどう思うんだろう?とか思ったら涙が出てきました。実話ベースの歌詞だけど、透明なヴォーカルのおかげで自分の物語にもすることができたんです。

細美:なるほど。

TOSHI-LOW:それは正しい意見だと思う。ヴォーカルに透明性があることによって、他の人の色もちゃんと乗るっていうね。もともと具体的な出来事を見て作ってるから、物語が強く出過ぎちゃうとやっぱりクサくなるし、俺が歌ったら余計にクサくなっちゃうと思う。だから良いバランスになったのかもしれないね。

―そういう意味でも、「君の声」はこのアルバムのなかの最高傑作だと思います。The LOW-ATUSという二人のコンビの素晴らしさが発揮されたこの一曲は鳥肌が立ちましたね。それと「みかん」かな(笑)。

TOSHI-LOW:偏った聴き方してるよね(笑)。でも、みんなが「みかん」がいい!って言いだしたらどうしよう(笑)。

細美:インタビューでも「みかん」の話ばっかり聞かれたら、もういいよって思うかもしれない(笑)。

TOSHI-LOW:あとファンがライブでみかんを投げるのが恒例になったりしたら嫌だよね。よくあるじゃん? コレクターズもガム投げるよね。

細美:でもガムとか紙飛行機ならいいけど、みかん投げちゃダメでしょ。たぶん怒られるよ。

TOSHI-LOW:ダメかな。皮を剥いて投げれば?

細美:一緒だろ(笑)。

―ベタですけど、仲良いですよね。兄弟みたいというか……。お二人の関係性で言うと「いつも通り」は細美さんからTOSHI-LOWさんへのラブソングだなって。

TOSHI-LOW:何言ってんの、全部そうだよ。全部、お互いのラブソングだよ。

―どんだけTOSHI-LOWのこと好きやねん!って思いながらアルバムの最後の曲「いつも通り」を聴きました

細美:そうですね。その通りだと思います。

TOSHI-LOW:歌詞っていろんなものが入るじゃん。みーちゃんのことも、もちろん自分の家族のことも友達のことも入るし。書いてると、いろんな人のことがどんどん目の前を通り過ぎていくわけ。たった一人のために書いているつもりでも、どんどん違う人たちとすれ違っていく。そうすると、そのすれ違う人の一人が、聴いている“あなた”でもあるだろうし。この歌を聴いてると、誰にでも当てはまるというか、最大公約数みたいな嫌な言い方じゃない普遍性を持っていて、最後にポジティブになれる感じがすごくするよね。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE